
累計620万部突破の人気絵本シリーズ「パンどろぼう」の最新作、『パンどろぼうとさすらいラーメン』(柴田ケイコ/KADOKAWA)。カバーにはスープがはじけるおいしそうなラーメンが描かれています。物語の展開は手に取ってからのお楽しみですが、本作を読むのがもっと楽しくなるようなお話を、作者の柴田ケイコさんに伺いました。

〈あらすじ〉
ある朝、パンどろぼうに一通の手紙が届きます。送り主は、寒いところに住んでいるのに寒いのが苦手だという、あざらし。手紙には「焼きたてほかほかのパンを届けてくれませんか」というお願いが書かれていました。そんなあざらしのために、ほっかほっカーで現地へと向かうパンどろぼうでしたが……。
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中華そばを中身ごと見せたキャラクター
——カバーにはパンどろぼうにそっくりのラーメンが描かれていて、その正体が気になりますが…。まず、最新作でラーメンを題材にした理由を教えてください。
柴田ケイコさん(以下、柴田):食べものをずっと描いてきているので、今回のキャラクターはどんな食べものがいいかなと考えて。ハンバーグとか、AからDくらいまで考えた案の中から選んだのがラーメンでした。
——ご自身もラーメンを食べるほうですか?
柴田:ラーメン屋さんを巡るほど好きっていうわけではないですけど、食べるなら鯛塩ラーメンが好きです。コテコテした脂っぽいラーメンがあんまり食べられなくて。
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——鯛塩ラーメンはさっぱりしていますよね。カバーに書かれた「さすらいラーメン」は醤油味っぽい雰囲気です。どんなキャラクターにしようと思われたのでしょうか。
柴田:器だけじゃなくて中身を見せるっていうところから考えました。最初は見せない案も考えたんですけど、それじゃあ寂しいねと。見せないとラーメンっぽさが出てこないし、おいしそうな感じも見えにくいので。中身を見せるなら、ザ・基本ともいえそうな醤油味の中華そばかなと思いまして。

さすらいなんで、いろんなところに行く屋台です
——読んでいくと分かりますが、さすらいラーメンは屋台なんですよね。
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柴田:屋台にするかお店にするか悩みましたけど、さすらいラーメンだし、お話の流れで屋台にしようと。ラーメン屋台の取材もしました。
——とてもリアルに描かれていて。屋台の図解ページでは細かい部分まで楽しめました。
柴田:最初のラフでは、みなさんもきっと目にしたことがある車のような屋台でしたけど、ほっかほっカー(パンどろぼうシリーズ第5弾から登場した移動式のパン屋さん)もパンどろぼうの世界観で作り上げていたので、今回もラーメンがそのまま屋台になったような形のほうが面白いですし、さすらいラーメンの性格に合ってるんじゃないかなと思い、描き直しましたね。
——本当ですね。屋台の形がラーメン鉢そのもので、とてもかわいいです。
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柴田:土台は丸いですけど、ちゃんと機能するようにしたいなっていうのは、屋台の取材で思ったことでした。コンロがある場所で調理をしたあとは、反対側に回ってバンバンバンと具材をトッピングし、そのままカウンターにドン!と出せるような。実際にラーメンが作れるような屋台になればいいなと思って、半分は調理場、半分は作業場っていう感じにしました。あとは、さすらいなんでね、ほっかほっカーと同じようにいろんなところへ行くんだろうなっていうことで、寝泊まりできるスペースも考えさせてもらいましたね。
——屋根にあたる部分ですか?
柴田:はい。屋台の中に梯子があって、そこから2階の屋根裏みたいな部屋にのぼって。そこがプライベート空間になっています。
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——屋根裏に隠れ家のようなスペースが…。お部屋には小物などがかわいく飾られていて、さすらいラーメンはラーメン好きなんだな、ということが伝わってきます。
柴田:これまでパンどろぼうを描いてきて、あとあとグッズ化したらいいなと考えることが増えてきたので、ナルトや玉子があとでぬいぐるみになるといいな、と思いながら小物を描きました。

寒いところで食べるラーメンのおいしさを伝えたい
——ナルトや玉子のぬいぐるみ、ネギの鉛筆、ラーメン鉢のライト…どれがグッズ化するのか楽しみが広がりますね。ラーメンを作るシーンもあって、「おいしそう!」という声が上がっているようです。
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柴田:ラーメンを描いたことがなかったので、具材に細かく色を入れたり、のっぺりしないで立体的に見えるようにテカリをつけたりして工夫しました。湯切りのシーンは、ラーメンを作り上げる工程のなかでもダイナミックになる部分なので、本当に麺が飛んでいるように描けたらいいなと。これも新たな挑戦でした。
——できあがったパンとラーメンがずらりと並ぶ場面では、いろんな種類のラーメンがあって。「どれが食べたい?」と話しながら読むのも楽しそうです。
柴田:パンを焼く窯が壊れてしまって、フライパンでパンを焼くんですよね。パンとラーメンが融合したページなので、ラーメンも1つではなく、いろんな種類を見せたいと思いました。全国で有名なラーメンってあるじゃないですか。北海道ラーメンや博多ラーメン、塩味のラーメンもあるし、さすらいラーメンと同じ醤油味の中華そばも入れて。中身にあわせて器もそれぞれに合うものを考えましたね。
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——寒いところに行って食べるあったかいラーメンのおいしさが伝わってきました。
柴田:パンもそうですけど、ラーメンってあったかいのがおいしいし、寒いときに食べるともっとおいしいですよね。絵本は平面なので温度を感じられないけど、寒いところであったかいものを食べる様子を想像して、感じてもらえるように、意識しながら描きました。寒いところに行くお話も今まではなかったので、新鮮に感じてもらえたらと思います。
——大人はもちろん、子どももラーメンが好きな子が多いですよね。ラーメンとお子さんの思い出はありますか?
柴田:子どもが幼児のときは外食だと味が濃いので、子ども用のラーメンを食べたり、家では袋ラーメンで作ったりして。子どもはやっぱりラーメンが好きなんでね。あと、即席で作れるので親としてもすごく助かります。そういう意味では結構ラーメンに頼っていましたね。
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斜め上をいく展開の繋がりがシリーズの面白さ
——本書でもお決まりの“残念顔”が出てきますし、後半には思いがけない展開も…。これから読む人に楽しみにしてほしいことを教えてください。
柴田:『パンどろぼう』ってちゃんとストーリーが繋がっているんです。今回はちょっと番外編のようでもありますが、奇想天外な展開もまた『パンどろぼう』の面白さ。シリーズを最初から読んでくださる方も増えてきたので、斜め上をいくようなストーリーがじつは繋がっていた…という全体を通しての面白さも楽しんでもらえたら。そう考えると、それぞれのお話が完全完結じゃないのがいいところだなと思います。
——今年で刊行から6周年を迎え、10月からアニメ放送(NHK Eテレ)も開始されました。シリーズを読み続けている子どもたちにどんなメッセージを伝えたいですか?
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柴田:このシリーズにはあまり教養的な部分は入れたくなくて。だけど、読んだらなんとなく伝わるメッセージ性を感じてもらえたら。読めば読むほど味が出るようにがんばっていますので、これからも年齢に関係なく愛していただけたらすごくいいなって思いますね。
取材・文=吉田あき、撮影=川口宗道
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