
舞妓や芸妓が集まる「花街」。そこには花街ならではの独自のルールと絆がある――。そんな知られざる花街のリアルを教えてくれるのが、元舞妓の松原彩さんが描いたコミックエッセイ『舞妓をやめたそのあとで』『舞妓をめぐる花街の人々』(松原彩/KADOKAWA)だ。
松原さんは舞妓という職業に強い憧れを抱き、15歳で花街へ。厳しい下積み時代を乗り越え、一人前の舞妓へと成長していく姿を描いた両作は、華やかな世界の裏側を垣間見ることができる貴重な作品である。さらに、花街の人との交流や、舞妓をやめた松原さんが進んだその後の人生も興味深い。
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松原さんは、どのような想いから自身の体験談を描こうと思ったのか。また、花街の伝統を支える人たちとの交流で得たものとは――? ご本人にお話を伺った。
――舞妓さんは置屋(生活の拠点となる場所)に入った後、女将さんから芸名をつけてもらえるそうですね。作中に描かれていた「松乃」というご自身の芸名は、実際につけてもらった名前でしょうか。
松原彩さん(以下、松原):いえ、「松乃」はコミックエッセイを描くにあたって考案した偽名です。
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本当の芸名は置屋の姉さん(先輩の舞妓さん)たちの名前の一部と、私の本名の一部を合わせたものでした。はじめて芸名で呼ばれた時は、「ああ、もう私もこの街の人間なんだな」と身が引き締まりましたね。
――置屋に入りまず始まったのは、舞妓さんのお手伝いをする「仕込みさん」としての過酷な日々だった、と描かれていました。休む間もなく働き、理想と現実のギャップを感じることもあったと思いますが、どのようにご自身の心をケアされていましたか。
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松原:「夢が叶った時の自分」を想像して頑張っていました。私の場合はホームシックも激しかったのですが、両親や親戚、友人に応援されて京都に出てきたので「夢を叶えた姿を見せたい」という気持ちを強く持って踏ん張っていました。
――仕込みさんとしての日々は辛く厳しいものの、礼儀作法を身につけ、芸の稽古に励むなど、その後の舞妓人生を支える基盤を作る大事な時期でもありますね。仕込みさん時代には、とくにどんな思い出がありますか。
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松原:仕込みさんの時期は、ただお手伝いをして過ごすのではなく、姉さんたち(先輩の舞妓さん)のお手伝いをしながら言葉遣いや所作、礼儀などを見て学んでいきます。
姉さんに口酸っぱく言われていたのは、「言われる前に気づいて動きよし」という言葉でした。舞妓になってお座敷に上がると、お客様の動きや雰囲気を察して動かなければなりません。仕込みさん時代の経験は、舞妓としてデビューしてからも重要なスキルとして役立ちました。
取材・文=古川諭香
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