
子どもの世話より、自分を優先してほしい。そんな夫からの要望に、妻の心はどんどんすり減っていく。『うずら男 モラハラかまって夫が人間をやめるまで』(前川さなえ/KADOKAWA LifeDesign)は、ふたりの男の子を育てる専業主婦・あすかと、妻への執着が止まらない夫・和史の歪な夫婦関係を描いた衝撃作だ。
ある日、あすかは和史から、8個のうずらの卵を育てるように命じられる。やがて孵化したうずらたちは、かわいいような、不気味なような…。この小さな生き物が、夫婦の歯車をさらに大きく狂わせていくストーリーは、多くの読者の心を揺さぶった。
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本作の著者・前川さなえさんに、幼少期の家庭環境に傷を抱え、大人になっても生きづらさを感じる「アダルトチルドレン」や「モラハラ」をテーマに描いた本作の制作背景や、夫婦関係、自分らしく生きるためのヒントについてお話を伺った。
――著者の前川さんから見て、和史とあすかの関係でとくに注目してほしいエピソードはどこでしょうか?
前川さなえさん(以下、前川):動物園へ行くシーンですね。和史は綿密な計画を立て、あすかに「動物園といえば、お母さんの手作り弁当だから」と命じる。でも当日は大雨。小さい子どもがいれば出かけるのは無理だとわかる状況でも、和史は強引に動物園へ行こうとして、思い通りにならないと怒る、という。
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でも和史の中では、「せっかく計画を立ててあげたのに、動物園に行かないなんて」という意識なんですよ。僕はいいことをしてあげた、それなのにあすかは感謝すらしないで否定する…と。そのズレが怖いですよね。
――悪気がないとはいえ、和史の感覚はどこかズレているように感じます。前川さんは、パートナーの考え方を変えることはできると思いますか? それとも、やはり変えられるのは自分自身だけでしょうか?
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前川:そう簡単には人は変わらないかな、とは思います。私は相手に変化を求めるなら、自分も見つめ直す必要があるんじゃないか、と考えるタイプ。ただ、モラハラの被害関係の中ではそうはいかないんですよね。
私自身、夫に嫌なことをされたときに不機嫌でいたことがあったんです。言わずともわかってほしい気持ちがあったので。あとから話し合って、夫には悪気がなかったということに気づいたんですが、「悪気があるないにかかわらず、そういうことは嫌だよ」とは伝えました。
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反対に、そういうこちらの気持ちも言わないと伝わらないですよね。日常の些細な夫婦喧嘩の中での気づきとして、なにも言わずに勝手に不機嫌でいたら「不機嫌ハラスメント」をしているかもしれないな…と勉強になりました。
取材・文=松本温美
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