
『日出処の天子』や『テレプシコーラ/舞姫』など、少女漫画界に革新的な作品を送り出し続けてきた山岸凉子。著者自ら短篇を編み直した『山岸凉子短篇ベストコレクション1・2・3』(KADOKAWA)が、2026年10月28日(水)に発売される。
山岸は1969年、『りぼんコミック』でデビュー。1971年に『りぼん』で連載が始まったバレエ漫画『アラベスク』の大ヒットで一躍人気作家となった。その後も『日出処の天子』で1983年に「講談社漫画賞」少女部門を、『テレプシコーラ/舞姫』で2007年に「手塚治虫文化賞」マンガ大賞を受賞。2026年には菊池寛賞を少女漫画家として初受賞するなど、少女漫画界を牽引する作家として確固たる地位を築いてきた。
続きを読む
今回発売されるベストコレクションには、数ある山岸の短篇から選りすぐった全25作を収録。各巻のタイトルには収録作の名前が採用されており、1巻は『鬼来迎(きらいごう)』、2巻は『木花佐久夜毘売(このはなのさくやひめ)』、3巻は『ティンカー・ベル』が表題作となっている。



目次に並ぶタイトルも、山岸作品ならではの顔ぶれだ。『蛭子(ひるこ)』『黄泉比良坂(よもつひらさか)』『月読(つくよみ)』『天鳥船(あめのとりふね)』『肥長比売(ひながひめ)』は、いずれも日本神話に登場する名前。さらには『ハーピー』『キメィラ』『メデュウサ』『スピンクス』など、ギリシャ神話の怪物を思わせるタイトルも目立つ。
続きを読む
神話や伝承は、山岸が長年にわたって作品のモチーフにしてきた題材である。ただし、物語の筋をなぞるだけではない。たとえば『月読』では、姉・アマテラスへの強い思慕を持て余し、苦悩する神・ツキノオの姿が描かれる。神々や怪物の名を借りながら、人間の業や心の揺らぎまで物語に織り込んできた。
一方で、身近な家族の姿を描いた作品も少なくない。『ベストコレクション2』に収録された『天人唐草(てんにんからくさ)』は、その代表例だ。主人公の岡村響子は、厳格な父に認めてもらおうと努力するものの、何をしても思いは届かない。やがて自信を失い、次第に内向的になっていく彼女の成長過程を丁寧に追った作品となっている。親に褒められたくて頑張ったのに、なぜか空回りしてしまう……。そんな記憶がある人なら、響子の姿に胸を締めつけられるかもしれない。
続きを読む
そして各巻の巻末には、同書のオリジナル企画「山岸凉子の舞台裏(バックステージ)」を収録。全25作について、山岸自身が創作秘話を語り下ろしている。作品が生まれた背景を知れば、再読の際にも新たな発見がありそうだ。
なお発売日の10月28日(水)から2027年2月8日(月)までの期間中、東京・六本木の「国立新美術館」では「少女漫画・インフィニティ 萩尾望都×山岸凉子×大和和紀 三人展」を開催。国立の美術館では初となる大規模な少女漫画展で、会場にはベストコレクションに収録された作品の原画も展示される。
続きを読む
『山岸凉子短篇ベストコレクション』の刊行にあたり、「短篇は埋もれているものも多い」と語っていた山岸。3冊で計1216ページに及ぶ作品群から、ぜひ心に残る1篇を探してみてほしい。
文=ハララ書房
記事一覧に戻る