紫式部『源氏物語 二十七帖 篝火』あらすじ紹介。少しずつ変化する玉鬘の源氏への思い。父娘の危うい関係はどうなるのか?
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平安時代の恋愛物語として有名な『源氏物語』ですが、古典作品であり難しく感じる方も多いかもしれません。身近に感じられるように、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第27章「篝火(かがりび)」をご紹介します。
『源氏物語 篝火』の作品解説
『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。
「篝火」とは、夜間の照明や警護のためにたく火のことです。消えかかった篝火のほのかな明かりに照らされた玉鬘(たまかずら)に、源氏は「篝火に立ち添ふ恋の煙こそ世には絶えせぬ炎なりけれ(篝火とともに立ちのぼる恋の煙は、私の永遠の恋の炎なのです)」と熱烈な恋の歌を詠み恋心をアピールします。それに対し、玉鬘は「行方なき空に消ちてよ篝火のたよりにたぐふ煙とならば(篝火の煙のついでに立ちのぼる程度の恋の煙なら、空に消し去ってください)」とさらりとかわすあたりに、玉鬘のセンスを感じます。聡明で機転の利く女性は、平安貴族にも魅力的に映るのですね。
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