
「誰のおかげでメシが食えると思ってる!」「文句があるなら出ていけ!」
意見をすれば横暴な言葉を返してくる父は、定年後も家事は一切せず、目の前のリモコンすら自分ではとらない。お酒や認知症の問題も出てきて、ついに母がダウン。典型的な昭和の男、“殿さま”のような父を介護することになってしまった次女・史子を主人公にした漫画『殿さまとわたし』(ぬまじりよしみ/双葉社)。著者が長年父と母を介護してきた経験をもとにしたフィクション作品だ。
「家族は自分の言うことをきくのが当たり前」という態度に翻弄される日々をリアルに、しかしコミカルに描く。そして父娘の物語だけでなく、姪夫婦の危機など家族の問題を描く本作。著者であるぬまじりよしみ先生に本作を描くに至った経緯から実際の介護生活についてなど、幅広くお話を伺った。
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――介護の中で、一番辛かった出来事はなんですか?
ぬまじりよしみ先生(以下、ぬまじり):父の認知症のような症状が進み、またお酒が我慢できないこともあって、朝早くご近所を突然訪問してしまったことがあったんです。そういったご迷惑をおかけしないように、夜中の1時に自宅から父の家まで服薬の補助に通っていた時ですね。もうひとつは言い合いの果てに「お前なんか中卒で十分だった」と言われたことでしょうか。「これが本音か」と思うと悲しかったです。
――介護する側にも怒りや嫌悪、疲労、罪悪感などさまざまな感情が生まれます。そうした感情を描くときに大切にしたことはどんなことですか?
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ぬまじり:もっと大変な思いをされている方々からしたら、史子も私も甘ったれに映ると思います。それでも史子には、素直な気持ちを吐かせようと思いました。
――「親のために献身的に介護をしないと」という気持ちと「自分の生活を保ちたい」という気持ちの葛藤は介護経験のある方の多くが持つものだと思うのですが、先生自身はどのように折り合いをつけていきましたか?
ぬまじり:私は献身的では全くなかったですね。ずっと逃げ腰でした。50年かけてこんな殿さまを作り上げた母に、心の中で毒づいていました。
取材・文=原智香
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