
「誰のおかげでメシが食えると思ってる!」「文句があるなら出ていけ!」
意見をすれば横暴な言葉を返してくる父は、定年後も家事は一切せず、目の前のリモコンすら自分ではとらない。お酒や認知症の問題も出てきて、ついに母がダウン。典型的な昭和の男、“殿さま”のような父を介護することになってしまった次女・史子を主人公にした漫画『殿さまとわたし』(ぬまじりよしみ/双葉社)。著者が長年父と母を介護してきた経験をもとにしたフィクション作品だ。
「家族は自分の言うことをきくのが当たり前」という態度に翻弄される日々をリアルに、しかしコミカルに描く。そして父娘の物語だけでなく、姪夫婦の危機など家族の問題を描く本作。著者であるぬまじりよしみ先生に本作を描くに至った経緯から実際の介護生活についてなど、幅広くお話を伺った。
続きを読む
――本作はシビアな出来事の中でも思わず笑ってしまうシーンがあるのが印象的でした。例えば、作中で父の横暴さに母の自律神経が参ってしまい、水が飲み込めなくなるという深刻な症状が現れますが、これを「水芸」で表現されていますね。
ぬまじりよしみ先生(以下、ぬまじり):亡くなって時間が経ってから振り返ると、あたふたオロオロしていた日々がドタバタ喜劇に思えてきたんです。もともとコメディ作家なので、特にコミカルにしようと意識したわけではないのですが、このようになりました。
続きを読む
――介護中のぬまじり先生の脳内でも、何か起きたときに「明るく捉えよう」という意識があったのでしょうか?
ぬまじり:当時は、いちいち傷ついて落ち込んでいました。でもある日突然、私にお酒にアレルギーが出て、酒に逃げることもできなくなったことがあって。「これはご先祖様のおはからい?」と思ったあたり、やっぱり能天気なのかもしれません。
取材・文=原智香
記事一覧に戻る