ネットミーム化した戦争成金の「どうだ明るくなっただろう」と、世界的名著『グレート・ギャッツビー』の笑いの共通点とは?/斉藤紳士のガチ文学レビュー⑲
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『読書家が選ぶ世界文学ベスト10』のような企画があると必ずといっていいほどランクインする作品があるが、スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」もそんな作品のひとつだろう。 批評家たちにも高く評価され、二十世紀の最高傑作との呼び声も高い作品でもある。 物語の舞台は1920年代のニューヨーク。 第一次大戦の特需により「ひとり勝ち」状態だったアメリカの栄光と狂騒のいわゆる「ローリング・トゥエンティーズ」の真っ只中の話である。 主人公はタイトル通りギャッツビーという謎の大富豪なのだが、語り手はニックという青年。 大富豪たちの豪華絢爛な生活を、少し気弱でそれほど裕福ではないニック目線で語っているところがこの作品の妙であり、絶妙なバランスを生みだしている。 また、詩的で美しい文章も魅力のひとつになっている。
風はすでに落ち、明るい夜空には、梢にはばたく羽音やら、いっぱいに開いた大地のふいごが蛙たちにあふれるばかりの生命を吹きこんだような、絶え間ない歌声が聞こえて賑やかだった。月光の中を、一匹の猫が影のように通り過ぎた。その姿をとらえようと頭をめぐらしたとき、ぼくは、自分がひとりでないことを知った。
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