
トム・クルーズ主演、アレハンドロ・G・イニャリトゥの最新作「DIGGER/ディガー」は控えめに言っても大傑作だった。「今、この時代に見るべき映画」は何かと聞かれたら、まず本作をまっさきに挙げるだろう。それほど本作はウィットに富んだすばらしい悲喜劇なのだ。
アメリカの石油王であるディガー・ロックウェル(トム・クルーズ)は、強欲で傲慢な大富豪を絵に描いたような人物。利益追求のために北海の油田プラントを強引に稼働させたことで地球が滅亡するかもしれない事態に。大統領らアメリカ政府をも巻き込み、混沌(カオス)となった世界でディガーがとった行動とは…。
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圧巻はなんといってもディガーを演じる主演のトム・クルーズだろう。エキセントリックで傲岸不遜な石油王を嬉々として演じており、その突き抜けた演技に快哉を叫びたいほどだ。実はトム・クルーズはその華麗なルックスに目を奪われがちだが、演技の実力は折り紙付きであり、これこそがデビューから45年もの長きにわたりハリウッドの第一線で活躍し続けてきた理由でもある。そしてその演技はエキセントリックな役になればなるほど輝きを増す。
彼が出演した映画「マグノリア」(1999)では、自己啓発セミナーを主催する傲慢なカリスマ講師フランクを演じており、女性を口説く方法を伝授するその姿と狂気をはらんだ熱弁はいまでも記憶に残る名シーンである。また、コメディ映画「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」(2008)では特殊メイクによって禿げ上がった小太りの風貌で傲慢で強欲な映画プロデューサーを演じた(でもチャーミングな目だけは隠せない)。一気呵成に繰り出す下品で汚い言葉の数々で人々を圧倒するキャラクターは強烈であった。この特殊メイクとエキセントリックなキャラは、本作「DIGGER/ディガー」のキャラクターと非常に近い人物造形でもあるが、こうした強烈なキャラクターを演じるトム・クルーズ作品にはハズレがない。
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この二つの作品でもセミナーシーンや罵詈雑言を放つ演技が光っていたが、もちろん本作「DIGGER/ディガー」でもその輝きは健在だ。ディガーがスピーチをするシーンではまさに見るものを圧倒する。
そしてこのシーンは監督であるイニャリトゥの意匠ともいっていいワンカットで描かれており、トム・クルーズの実力と監督の腕が高次元で昇華された、映画史のなかでも後々まで輝き続けるであろう白眉のシーンである。
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本作は主演のトム・クルーズだけでなく、登場する人物みながエキセントリックなキャラクターのため異様なテンションで物語が進むブラックコメディ色の強い作品だ。国家と資本主義が強く結びついた世界と環境問題、現代の歪んだアメリカの姿を本作と重ね、寓話の趣が強い作品だということに気づかされる。そして見る側はそうした映画文脈の外側の安全地帯で傍観者として本作を笑いながら見ることになるが、やがてその笑いを引きつらせる、劇薬のような展開が待ち受けている。
これ以上は大いにネタバレを含むので、ここでは多くを語らない。大傑作であることは間違いない。実際に劇場に足を運んで、本作ならではの強烈な映画体験をしてほしい。
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文=すずきたけし
映画情報
タイトル:『DIGGER/ディガー』

公開表記:10月9日(金) 全国ロードショー
クレジット:(C) 2026 WBEI and Legendary
■監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ(『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』『レヴェナント: 蘇えりし者』)
■出演:トム・クルーズ、リズ・アーメッド(『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』『ヴェノム』)、
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ジョン・グッドマン(『モンスターズ・インク』シリーズ)、ザンドラ・ヒュラー(『プロジェクト・ヘイル・メアリー』『落下の解剖学』)、
ジェシー・プレモンス(『ブゴニア』『シビル・ウォー アメリカ最後の日』)、マイケル・スタールバーグ(『シェイプ・オブ・ウォーター』)
■製作:トム・クルーズ、アレハンドロ・G・イニャリトゥ
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