
夏の暑さが過ぎ去り、秋の到来に胸が高鳴る頃。何かをしたい意欲もまた高まっていく。『季節が好きなわたしとマダム』(にいざかにいこ/KADOKAWA)は、うつろう四季の中に小さな喜びを見つけるキコと節子さんの日常を描く漫画。その時期ならではの丁寧な暮らしのアイデアを教えてくれる。
第9話では、キコが“キッチンの衣替え”を楽しんでいた。まだ夏のあたたかさが残っているうちにコンロ周りの緩んだ油汚れを取り除く。器を透明感ある涼しげなものから、ぽってりと厚みあるものに入れ替える——。衣替えといえば洋服を思い浮かべるが、キコにとっては器の衣替えもまた、季節を味わうための大切な習慣なのだろう。
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さっそく、秋の器に合いそうなスイーツを作り始めるキコ。取り出したのはいちじくだ。いちじくには夏果と秋果があり、夏果は8月いっぱい頃まで出回るため、夏の終わりを告げるような果実とも言える。ホットケーキミックスを使ったお手軽マフィンをいただきながら、「甘いとしょっぱい」と「過ぎ行く夏と待望の秋」、それらが混ざり合う“今”を楽しむキコ。
このエピソードで印象に残ったのは、キコが木製のカトラリーにヤスリをかけ、エゴマ油を塗り込んで手入れをする姿だ。木製の道具は使っていくうちに風合いが変わり、深みのあるツヤや色合いが育っていく。いつの間にかついてしまった小さな傷や染みにも愛着が増す。夏の終わりの気分がいい日には、大切な道具たちを何カ月か振りに取り出し、その変化をじっくりと味わうのも良さそうだ。
文=吉田あき
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