
『笑うかのこ様』『恋だの愛だの』など「かのこ様」シリーズで大人気の漫画家・辻田りり子氏が描くお嬢様×執事のすれ違いコメディ『天音お嬢様の言うことには』(白泉社)の第1巻が発売された。
物語は、19歳でヒモをしながら生活をしている内海涼宵(りょうしょう)が、とある高額バイトの募集(オーディション)に応募するところから始まる。

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バイト内容は、中学生のお嬢様の話し相手になるというもの。推しの人気若手芸人が結婚してしまったことでショックを受けたお嬢様。彼女の励まし役の男性を募集するというのだ。破格の時給の上に、続ける限りは衣食住も保証されるという好待遇。

そして、内海はその美貌でお嬢様の心をつかみ、見事合格となった。

天音お嬢様は、著名なグループ会社を経営する星野家の末っ子であり、紅一点。兄と父から溺愛されて育ってきたという。しかしそんな彼女は、話してみると意外にも年相応の普通の女の子という感じで、いい意味で気取った感じがない。
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楽にお金を稼げる仕事に就けて浮かれる内海だったが、一方で天音お嬢様に仕える執事の風間有悟からの視線は冷たい。これまでスパイなど様々な危険からお嬢様を守り続けてきた風間にとって、内海は何か目的があってお嬢様に近づいてきた存在なのではという疑惑があったのだ。そんな風間の疑念の目から逃れるため、内海は自分は漫画家を目指している夢追い人なのだと説明する。これまで幾多の女性に効いてきた文句は、風間にもちゃんと刺さり、無事に信頼(?)を獲得する。そして、生活のサポートをしてくれる風間とは、日々接する機会も多く、次第にお互いを理解しながら打ち解けていく。

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そして、気が付けば内海は天音お嬢様のカリスマ性に感銘を受け、心から彼女を喜ばせたいと思うようになっていた。……と、ここまで読めば、ヒモとしてフラフラしていた男が、一人の少女と出会って更生していく物語のように思えるだろう。しかし、この作品はそう一筋縄ではいかないのが面白いところだ。
実は、内海が応募した「天音お嬢様の励まし役になる」というオーディションはあくまで表向きであり、実際はBLが大好きな天音お嬢様による「有くん(=執事の風間有悟)にピッタリの“受け役”を見つける」ためのオーディションだったのだ。推していた芸人の結婚によりショックを受けていたのは事実だが、それは天音お嬢様がガチ恋をしていたからではなく、そのコンビを“受け×攻め”として愛でていたからこそ、一般女性が2人の間に入ってきたことが受け入れられなかった、というのが真の理由であった。
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天音お嬢様の思惑を理解した上で、本作を最初から読み返すとさらに面白い。内海は自分の顔の良さや事前のリサーチが実を結んでオーディションに受かったと思っていたが、実際は内海が「有くんが昔溺愛していた愛犬とそっくり」だったから受かっただけだったのだ。やけに有くんと一緒に行動させたり、妙にタイミングよく2人の前に登場したり……読んでいたときに抱いたちょっとした違和感は、すべては天音お嬢様によるカップリング計画に基づくものだった。

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この作品をおすすめするとき、ジャンルを問われると難しい。ラブストーリーではないし、もちろんBLでもない。BL好きなお嬢様と知らず知らずのうちにカップリングにされているイケメン執事たちのすれ違いを楽しむという、かなりユニークなコメディ漫画だ。特にBL好きの読者にとっては、天音お嬢様に共感できる場面も多いのではないか。なかなかない設定の漫画ゆえに、予想できない展開も多々あり、読んでいるだけでワクワクしてくる作品だ。
文=園田もなか
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