※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年10月号からの転載です。
◎今月の編集者
あさま社代表 坂口惣一さん

『100分de名著』のプロデューサー・秋満吉彦さんとは、以前勤めていた出版社で2冊ほど本をご一緒していました。あさま社を立ち上げて2年ほど経った頃に再会する機会があり、「名著」や「読書」をテーマに、また一冊作りたいですねと話したのがこの企画の始まりです。
『100分de名著』にはさまざまな専門家が出演しますが、番組ではどうしても作品の解説が中心になります。でも秋満さんから、打ち合わせで聞く「その人自身がどう本を読んできたのか」という話が面白いと伺って。読書術ではなく、本によって人の人生がどう変わるのかをまとめた内容にしたいと思いました。
続きを読む
そこでお願いしたのが斎藤幸平さん、小川公代さん、安田登さんです。3人に共通するのは、変化を厭わないこと。まさに本を読んだことで、それまでの考え方や生き方さえ変えてきた方たちです。斎藤さんがマルクスとの出会いによって思想を変えていったように、「本によって人生が変わる」を実体験として語っていただける方を選びました。
取材は一人につき1回、3〜4時間ほど。すべて秋満さんにも同席していただき、対話するような形で話を引き出しました。みなさん専門分野も語り口もまったく違うので、秋満さんには各章でナビゲーターとして補助線を引いていただいています。当初のサブタイトルは「人生を激変させる読み方」でしたが、取材を重ねるうちにもっと強く言い切っていいと感じるようになり、「なぜ読むことだけが人生を変えるのか」としました。書店が減り、タイパやコスパが重視される今だからこそ、本というメディアにしかできないことを伝えたかったんです。
続きを読む
あさま社では「みらいに届く本」を掲げています。今売れるかだけではなく、10年後に手に取った人にも届く本を作りたい。この本も、読者がこれから読む本を変え、その先の人生まで少し変えていくような一冊になればと願っています。
さかぐち・そういち●昭文社、フォレスト出版、SBクリエイティブを経て2022年、軽井沢にてあさま社を創業。前職では『医者の本音』(中山祐次郎)『こころの相続』(五木寛之)などを編集してきた。最新担当作に『はじめての雲のガイドブック』。
続きを読む
取材・文:皆川ちか

『血肉となる読書 なぜ読むことだけが人生を変えるのか』
(斎藤幸平、小川公代、安田 登:著 秋満吉彦:ナビゲート/あさま社) 2200円(税込)
一冊の本との出会いが考え方も生き方も変えてしまう。斎藤幸平、小川公代、安田登が自らをゆさぶった本と読書体験を語る。『100分de名著』プロデューサー・秋満吉彦とともに「読むこと」の力を見つめ直す読書論。
続きを読む
気になる!ポイント
少数精鋭の本づくり、その勝負どころは?
坂口さんは以前、僕の『観察力の鍛え方』を編集してくれた人。その後独立して、軽井沢でひとり出版社「あさま社」をはじめた。年に1、2冊しか本を出さないと聞くと、それでどうやって成立させているのか、やっぱり気になる。
この本も斎藤幸平さん、小川公代さん、安田登さんという3人に語ってもらう、かなり手間のかかる企画だ。この人たちをなぜ選び、どう一冊にまとめ、どう売ろうと考えたのか。たくさん本を出すわけではないなかで、坂口さんは何を基準に企画を立て、どこに勝負をかけているのか。それを知りたい。
続きを読む
さどしま・ようへい●1979年生まれ。講談社勤務を経て、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。三田紀房、安野モヨコ、小山宙哉ら著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。
記事一覧に戻る