※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年10月号からの転載です。

書籍一冊分、8万字のエッセイをわずか10日で書き上げたことで話題になっている人がいる。YouTuberとして活躍する、たむらかえさんだ。彼女を一言で表すならば、「ストイック」。気になることが見つかると、とことん突き詰め、時間やお金を費やし、その道を極めようとする。そんな状態をたむらさんは「異常熱中」と呼び、初の著書にも「熱中のパターン」を綴った。タイトルは『異常熱中のすすめ』だ。
「出版の打診をされたとき、最初はそこまで乗り気ではなかったんです。これまでたくさん読書してきたわけでもないですし、私が本を書くことに意味があるんだろうか、と。ただ、ずっと“残るもの”を作ってみたい気持ちはあって。私にとって、動画もその一つ。だから、本という形で私の考えていることが残せるのであれば、やってみてもいいかもしれないと思い直しました」
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そうして取り組んだ、初めての執筆作業。しかし、決して順調に進んでいったわけではない。原稿はほぼ真っ白な状態で、気づけば、〆切まで1カ月もない状況に。そこで意を決したたむらさんは、本気で執筆を開始する。動画の企画と絡め、「10日で一冊分書き上げる」と宣言した。
「タイピングよりも喋るほうが早いので、ベースとなる原稿はすべて音声入力で仕上げていきました。それでもしんどくはあったんですが、何文字書けたのか目に見えて積み上がっていくので、ゲームを攻略していくような気持ちでもありました。しかも、動画に残すつもりだったので絶対にサボれないわけです。結果として、本当に10日で書き上げることができて、動画としても面白いオチになったと思います」
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本書にまとめたのは、たむらさんがこれまで熱中してきたものの数々だ。勉強、アルバイト、お菓子作り、高い飯、そしてYouTube。どのようにしてハマり、どう楽しんできたのかを素直な語り口で綴っている。
「私は視野が狭いので、好きなものを見つけるとすぐにハマって、すぐに飽きちゃうんです。これまでずっと繰り返してきました。だから、そういったことを通して何かを得られた実感はなかったんです。でも今回、そんな自分のことを客観的にまとめてみて、もしかしたらすべては無駄じゃなかったのかもしれない、と思えました。たとえば、一人で延々と喋りながら撮影をして、編集した動画を投稿するのだって、実は音声入力で執筆することと似てるんです。つまり、YouTubeを続けてきたからこそ、こうして初めての本を書き上げることができた。そんな風に、自分の軌跡がつながって一本の道になっていることを実感できました」
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本書を読んでいると、好きなこと、気になることに突き進む勇気をもらえる。周りからすればそれが“寄り道”に見えたとしても、だ。
「結局、寄り道したことを無駄にするかどうかって、自分次第だと思います。思い切り熱中して何かを得られたとしたら、その後の人生で役立てることができる。学生ならばまずは勉強しなさいと言われたりもしますけど、どうしても好きなことがあるなら追求してみてもいいんじゃないかと。私みたいに、そこで得たものが思わぬ形でつながったりすることがありますから」
取材・文:イガラシダイ
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たむら·かえ●チャンネル「たむらかえ」「たむらかえ2」を運営するYouTuber。登録者数は合計40万人超。東京大学大学院を修了し、理学博士を取得。その後、YouTuberとして生活し、現在は辻調理師専門学校の製菓衛生師コースに通う。YouTubeではハイクオリティなお菓子作りの様子と、肩の力が抜けた日常系動画の二つを投稿。

『異常熱中のすすめ』
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(たむらかえ/KADOKAWA) 1980円(税込)
予測不可能な人生を歩み、好きなことに没頭する。そんな生き方をありのままに発信し、人気を集める著者が、これまでの人生の断片を綴ったエッセイ集。勉強やお菓子作り、YouTuberとしての活動など、それぞれに異常熱中してきた過程が詳らかに。
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