作家やクリエイター、お笑い芸人、音楽アーティストなど、多彩なジャンルで活躍する人たちが、心に残る一冊をセレクトして、自身の言葉で紹介! 本を選んだ理由やそれぞれならではの視点を通して、本との新しい出会いや、読書の楽しみを届けます。
私は今まで、本を選ぶ際、自分が今抱えている問題や状況に近いものを読むことが多かった。しかし、本を読む醍醐味として、自分の知らない世界、人の世界を覗くことができる面白さもあるだろう。
作家やクリエイター、お笑い芸人、音楽アーティストなど、多彩なジャンルで活躍する人たちが、心に残る一冊をセレクトして、自身の言葉で紹介! 本を選んだ理由やそれぞれならではの視点を通して、本との新しい出会いや、読書の楽しみを届けます。
私は今まで、本を選ぶ際、自分が今抱えている問題や状況に近いものを読むことが多かった。しかし、本を読む醍醐味として、自分の知らない世界、人の世界を覗くことができる面白さもあるだろう。
最近、特に面識があるというわけではないが、能町みね子さんという人間に興味を持ち、エッセイや小説など、能町さんの著書を読み始めた。私には想像もつかないような人生に、驚きの連続だった。
能町さんは現在、ゲイのライター・サムソン高橋さんと、恋愛関係ではない“結婚生活”を送っている。そのことについて書かれたエッセイも私にはとても新鮮だったし、自分の好きに生きてもいいんだよなと再認識させてくれた。他の著書でも、特に性別、恋愛、結婚、私が無意識に「こういうもの」と思っていたものをひっくり返してくるような読書経験だった。
漫画『ときめかない日記』(幻冬舎)は、人に対する「好き」がわからない主人公の女性が題材だが、私は「好きがわからない」という気持ちに共感はできないだろうなと思いながら本書を読み始めた。しかし、読み進めていくうちに主人公がどんな感覚でいるのか、彼女の気持ちが手に取るようにわかる気がした。
主人公のめい子は、26歳。社会人としてやっと二人がけのソファが買えるくらいの部屋に住むことができるようになり達成感を抱いていた。しかし同時に、その二人がけのソファを皮切りに、今まで仕事を頑張っていて蔑ろになっていた、彼氏いない歴=年齢、そして処女である自分の現実に直面することになる。
めい子は、友人の恋愛話にも興味が持てないまま、友人が自分にはできていないことをこなしていく姿に焦りを募らせていく。それから一念発起し、職場やアプリで好きになれそうな人を探し始めたり、ついには職場の人を好きになると決めて奮闘したりするが、めい子は一向に好きがわからずに終始困惑している。
普通に相手を見つけて、普通に好きになる。この「普通」に苦しむのだ。
読んでいるうちに、私も主人公と同じように疲弊してしまっていた。
恋愛や人を好きになることは、自由だし、義務ではない。
だけど、みんな当たり前のようにその自由を手にしていると、自分もしないといけないんだと途端に苦しくなる。しかし、誰かの見よう見まねでは心までは動かせない。
知らない世界として読み始めた本作だが、読み進めるほどに他人事ではなかった。私は、普通に人を好きになるという気持ちもわかって生きてきたつもりだった。けれど、その「普通」がみんなと同じかどうかは実際わからないなと思うと少し怖くなった。「好き」以外にも、痛い、苦しい、楽しい、人間の感情は人それぞれ測ることができないと思う。
そういえば、私自身、クリスマスやお楽しみ会など「楽しい」が前提のイベントや“絶対泣ける”映画が苦手だ。周囲と同じように楽しんだり、感動したりしなきゃいけないという状況にプレッシャーを感じるからだ。「苦しい」と感じる場面でも、周囲が平気そうな顔をしていると、みんなが平気なのだから、自分がおかしいんだと思い、感情を抑え込むことも多かった。みんなの普通が正しいように思えて、自分の感じ方の方がどこか間違っているような気持ちになってしまうのだ。
私は、普通に見えるかもしれないけど、それっぽいからこそ、自分自身をまず「普通」の物差しで測ってしまうことにも気がついた。わからないという状態が一番苦しいから、手っ取り早い「普通」で自分を測ってしまうのだろう。しかし、私が憧れていた「普通」は思っていたよりも、手強いものだったのかもしれない。そろそろ普通の物差しに自分を捩じ込むのは諦めてもいいのかもしれない。そのことをまずは自分に許してあげたい。
何の迷いもなく「普通」の恋愛をこなしているように見える人も、もしかしたら、めい子のようにこの人を好きになろうと決めて、多少は妥協をしながら、関係を育んでいる人もいるのではないだろうか。その人たちは、もしどうしてかと問われたら、「だって、そうするしかないじゃん」とか答えるのだろう。
その気持ちもよくわかってしまう。
人間って、大人って、恐ろしくてめんどくさいものだなぁ、なんてつくづく思う。
文=モモコグミカンパニー
◆モモコグミカンパニーさんが紹介した本
『ときめかない日記』(能町みね子/幻冬舎)
【著者プロフィール】
モモコグミカンパニー
2015年 BiSHのメンバーとしてデビュー
2016年1月 メジャーデビュー[楽曲の作詞を手掛ける]
2023年6月29日 東京ドーム「Bye-Bye Show for Never」をもって解散
グループ在籍中の2022年に小説家としてデビュー。
現在も音楽活動や、作家としての執筆活動など多岐にわたって活動中。
TikTokアカウント「モモコグミカンパニーの本棚📚」で、気になった書籍を紹介している。
写真集『死にぎわ』(仮)を制作中。
制作過程についてnoteで発信している。
https://note.com/companynote_0904
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