
誰かから逃げるため、通常の手続きを踏めない引っ越しの手伝いをするのが“夜逃げ屋”。運び出しの時間も限られているので、大人ひとりでも夜逃げはなかなか難しいものだ。しかし近年は、子連れでの夜逃げ依頼が増えているという。夜逃げ屋で実際に働き、その体験をマンガにした『夜逃げ屋日記』(宮野シンイチ/KADOKAWA)にも、子連れ夜逃げのリアルな実態が描かれている。
宮野さんが手伝うことになった依頼は、DV夫から逃げようとする妻からの依頼。夫は町内会長、PTA会長もこなす近隣からの人望が厚いタイプ。しかし家庭内ではまったくの別人で妻・理恵さんには気に入らないことがあると暴力、物を投げるなどやりたい放題。それでも長年我慢していたが、夫がついに中学生の息子にも手をあげるようになり、夜逃げを決意したという。
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子連れの夜逃げでは、子どもの安全確保も重要な課題となる。息子は中学校を早退し、帰宅はせずに社長と合流して、一足先に移転先へ移動するという予定を立てた。
自分の分だけなら必要最低限の荷物だけでいいが、子どもと一緒に逃げるとなるとそうはいかない。子どものおもちゃ・本、これまで作った工作や絵……。私自身子どものものをなかなか捨てられないタイプなので、もし今子どもと一緒に夜逃げするとなったら何を持っていくかと真剣に考えてしまった。
夫のDVで見えるところにアザがあっても、近所の人は「妻のヒステリーに夫が振り回されている」と信じ込み、周囲から孤立している依頼者。中学生という親以外の人間関係も大事な時期に引っ越しを選んだ決意は並大抵のものではないはずだ。
引っ越しが成功し、今後この親子に幸せな未来が待っていることを、願わずにはいられないエピソードである。
文=原智香
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