
親からの虐待、配偶者からのDV、家を特定しているストーカー。それらから逃げようとする被害者に寄り添ってくれる会社が“夜逃げ屋”だ。そしてその会社で実際に働き、体験したことをマンガにしたのが『夜逃げ屋日記』(宮野シンイチ/KADOKAWA)。“夜逃げ屋”は依頼者の夜逃げが完了した後も、その後の生活を見守ってくれる。
小さい頃から家族全員に虐待され続けた依頼者・村田さん。不測の事態が起きて、急遽30分で荷物を運び出すことになった引っ越しが無事終了。引っ越し先に向かったトラックに宮野さんも乗り込み「あと2時間くらいかな…」と考えていると、トラックは停車。なんと実家のすぐ近くのアパートで村田さんは新たな生活を始めるという。新しい生活圏が実家と近ければ近いほど、家族と遭遇してしまうリスクは増える。それでも新居の場所をここに決めたのは、村田さんの意思だった。
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村田さんにとっては、これまでの虐げられていた生活が当たり前だったのだ。家族と離れたいと思う反面、「それ以外の新しい生活が自分にできるのか」という不安・恐怖の気持ちもあるという。だからこそ、まずはここで暮らし、気持ちの整理がつくたびに引っ越しを重ねて、少しずつ家族から離れていこうと考えていると、村田さんは著者に伝える。
「家族がいつか自分を認めてくれるのではないか」という期待をずっと捨てきれずにいたと涙する村田さんの複雑な心情に、こちらも胸が締め付けられてしまった。社長はそんな村田さんの背中に手を置き、「ようやく離れられた家族に囚われるのは人生勿体ないよ」と語り掛ける。そして今後の不安を口にする村田さんに、「その時はまた私を呼べばいい」と、この関係は続いていくことを伝えるのだ。
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夜逃げをするということは、これまでの人間関係をすべて断ち切るということだろう。だからこそ依頼者が抱える不安までも社長はしっかり受け止め、これからも前を向く手伝いをすることを宣言する。同性でも惚れるこの社長の心意気が、最高にかっこいい。
文=原智香
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