
DVをするパートナーや毒親などから逃げたい人の引っ越しを手伝う“夜逃げ屋”。そんな夜逃げ屋で実際に働き、リアルな体験をマンガにしたのが『夜逃げ屋日記』(宮野シンイチ/KADOKAWA)だ。
テレビで観た夜逃げ屋の女社長の話を聞くため、コンタクトを取った宮野さん。突然誘われた夜逃げの手伝いも終わり、ついに社長から話を聞くためカラオケルームへ向かう。社長はなんでも答えると言いながら、夜逃げ屋の実態については「マンガに描いたら危険」とあまり話してくれない。結局8時間も熱唱し、取材は煙に巻かれたかと思いきや、「夜逃げ屋を始めたきっかけを教えて欲しいんですけど」という問いに、社長は自分の鼻筋を指さす。
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聞けば社長は以前、元夫からDVを受けていて、鼻にヘッドバットされたときの傷跡が今も残っているという。その夫のところからひとりで夜逃げしたあの日、歩いている途中で夜空を見ながら自由になった自分を実感し、「生きてて良かった」と思えた。それが一番のきっかけだという。
途中、宮野さんの「どうして逃げなかったんですか?」との問いに、「見つかった時の報復を考えると今の方がマシだと思っちまうんだ」と答えた社長。それでも逃げられた社長はむしろ気持ちの強い人だと思う。今もそのように考えて、自分に危害を加える人間から離れられない人も多くいるだろう。
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作中、社長は依頼者に対し「これから頑張りましょう」と、その後のこともサポートすると伝える。そんな社長の強さと優しさがこの会社の、そして本作の魅力のひとつである。
文=原智香
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