
大切なパートナーがこの世を去ったとき、残された人はどうやって明日からの日常を生きていけばいいのだろう。『あなたが死んじゃったあとに~かなしい時の歩き方~』(いのうえさきこ/秋田書店)は、愛する人を失った悲しみと、そこから一歩を踏み出していくふたりの女性を描いた物語だ。
主人公・すみれは、がんを患った同居中の恋人・裕人を看取ることにした。医師からは「会いたい人には会っておいたほうがいい」と勧められ、すみれが連絡を取ったのは、裕人と前妻の間に生まれた娘・詞葉だった。16年間会っていなかった父娘は久しぶりの再会を果たすものの、その直後に裕人の容態は急変する。戸籍上のつながりがない「内縁の妻」と、血のつながった「前妻との娘」。ふたりは病室で裕人を囲み、彼の最期の数日をともに過ごすことになる。
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生前の裕人は、通勤電車の窓から見える「キング」という看板の正体を気にしていた。確かめるために看板の場所をひとりで訪れたすみれは、それが「キング」ではなく「ウォーキング教室」の看板だったと知って思わず脱力する。その後、喪主として無事に葬儀を終えたすみれだったが、その帰り道、詞葉から「表向きだけでもかなしそうにしていればいいのに」と不意にトゲのある言葉を投げかけられる。
裕人の最期を一緒に過ごしたことで、詞葉との間に連帯感が生まれたと感じていたすみれだったが、突然そんな態度を見せた詞葉に戸惑いと怒りを覚えながら、すみれは裕人の骨壺を抱え、彼との約束を果たすために「キング」の看板の前に再び向かう。するとそこで目にしたのは、なんとそのウォーキング教室の窓から顔を出す詞葉の姿だった。
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裕人が遺した「キング」の看板の謎が結んだ不思議な縁。残された彼女たちが、裕人のいない日々をどう歩いていくのか。そして血のつながりも戸籍上の関係もないふたりはこれからどのような関係を築いていくのか。行く末を見届けずにはいられなくなるだろう。
文=つぼ子
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