
ある日かかってきた電話で家族の日常が一変した。『16歳で帰らなくなった弟』(きむらかずよ/KADOKAWA)は、高校3年生だった著者・きむらかずよ氏が、1歳年下の弟をバイクと車の衝突事故で亡くした経験を描いた作品である。突然の別れによって日常が崩れ、家族それぞれが悲しみを抱えながら再び歩き出すまでが綴られている。
物語の始まりは、深夜にかかってきた警察からの電話だった。弟がバイクの運転中に加害者となる青年が運転する自動車と接触事故を起こし、容態が危ないという。家族で急ぎ病院へ向かうものの、弟はすでに事切れていた。自由奔放でやんちゃだった、人懐っこく周囲から愛されていた16歳の弟。ついさっきまで続いていた日常が、ほんの一晩で別のものへ変わってしまった。その現実を受け止める間もなく、家族は葬儀や事故後の対応に追われることになる。
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さらに家族を苦しめたのが、この事故をめぐって広がる心無い噂話だった。狭い地域のために話はあっという間に伝わり、盗んだバイクを運転していたなどの根も葉もない事まで耳に入ってくる。加害者青年の虚偽の証言などにも心をかき乱され、悲しみだけでは片づけられない怒りや不信感が積み重なっていく。そんな暗闇の中にいた家族たちを支えたのが、弟の友人をはじめとした人々の存在だった。
職人気質でお酒が入ると財布の紐がゆるむ父親に、肝が据わっていてよその子でも本気で叱る母親。思春期の真っただ中で素直になれない姉と、ケンカっ早いものの誰からも好かれる弟。事故の前は家族ゲンカもすれば全員で笑い合う時間もあり、にぎやかで、愛情のあふれる日常があった。だからこそ弟がいなくなってしまったことの苦しみが痛いほど伝わってくる。
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誰にでも必ず大切な人との別れは訪れる。もしかしたらそれが今日かもしれない。本作は当たり前に続くと思っている日常がどれほどかけがえのないものであるかを、あらためて教えてくれるだろう。
文=坪谷佳保
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