
幕末の京都で刀を交えていた武士が、雷に打たれて目覚めた場所は、なんと現代の時代劇の撮影現場だった……。2026年8月12日に発売された本書『侍タイムスリッパー』(安田淳一:監修・原作、こりす:作画/徳間書店)は、2025年の第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞に選ばれた映画をコミカライズしたものだ。
主人公は、会津藩士・高坂新左衛門。家老から長州藩士を討てという密命を受け、山形彦九郎と刃を交えていたさなか、新左衛門は落雷によって気を失ってしまう。目を覚ますと、そこに広がっていたのは見慣れない景色だった。なんと彼は、百数十年後の現代日本にある時代劇の撮影現場へとタイムスリップしてしまったのだ。守ろうとした幕府はとうの昔に滅んでおり、己の存在意義を見失う新左衛門だったが、「時代劇」というものと、そこで働く温かい人々との出会いによって、生きる意味を見出していく。
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自分の剣術を活かせる道として彼が選んだのは、時代劇の殺陣場面になくてはならない「斬られ役」だった。本物の武士ならではの凛とした佇まいと身のこなしは、次第に撮影所の人々を惹きつけていく。現代の常識を知らない新左衛門の言動に笑わされる一方で、彼が何事にも真剣に向き合う姿に胸を打たれるだろう。
原作映画の物語をなぞるだけではなく、作画を手がける、こりす氏ならではの解釈で膨らませた場面が楽しめるのもコミカライズ版の見どころだ。安田淳一監督とこりす氏の対談や描き下ろし漫画なども収録され、スクリーンで観た世界をより深く味わえるのも本書の魅力だ。
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武士としての矜持を胸に、新たな時代で自らの居場所を見つけていく新左衛門。タイムスリップと時代劇撮影所という設定と舞台を活かしながら、仕事に対する誇りや周りの人とのつながりの大切さが、温かなユーモアとともに描かれる。映画で感動した人はもちろん、まだ作品に触れていない人も一気に引き込まれるだろう。そんな熱い人間ドラマと爽快かつ迫力のある殺陣を、存分に堪能してほしい。
文=ゆくり
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