
『夜のかたすみで君とアイスを』(杉/KADOKAWA)は、夜の公園を舞台に、いつもそこで顔を合わせる男女が交差するラブストーリー。出会った当初の近すぎず遠すぎないふたりの距離に心地よさを感じ、やがてそれぞれの優しさと報われない恋心に温かさと切なさが感じられる物語だ。
社会人の遥には、仕事で落ち込んだときにするルーティンがあった。それは会社帰りにお気に入りの公園に寄ってアイスを食べること。これをすることで「これ食べたら反省はもうおしまい」と自分に言い聞かせることができ、暗くなった気持ちをリセットしていた。そんなことを繰り返していると、ひとりの青年と公園でよく顔を合わせるようになり、いつしか言葉を交わす間柄になる。ふたりは「おねーさん」「お兄さん」と呼び合い、名前も知らないまま、一緒にアイスを買って他愛のない話をしながら食べる。これまで公園ではひとりで過ごしていた時間に変化が訪れ、彼と会うことが遥の新しい楽しみになった。
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残業で帰りが遅くなったある夜、いつもの公園でうつむいている「お兄さん」の姿があった。遥は彼に何が起きたのか尋ねてみると、片思いをしている人にドタキャンされたという。そして「都合のいい存在」であり続け、今ではその関係のやめ方すらわからなくなっているというのだ。「どうしたらいいと思う?」と相談された遥は、彼のためにある行動を起こす。
すると、それをきっかけに彼は元気を取り戻す。遥はそこで初めて彼が「凌太」という名前であることを知り、そして「ありがと」と言って笑う凌太の顔を見て、一日の疲れも吹き飛ぶほどに胸を高鳴らせてしまうのだった。片思いの人がいるとわかっているのに——。
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曖昧な関係を断ち切れない苦しさと、好きな人の一番になれないもどかしさ。遥と凌太の付かず離れずの関係が心地よいだけに、それぞれが抱える気持ちが切ない。アイスの甘さと片思いのほろ苦さが重なったふたりの恋心がどこへ向かうのか目が離せない。
文=ゆくり
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