
『どいつもこいつもバカばっか 画面の中も地獄』(まるたおかめ/KADOKAWA)は、何気なくSNSに投稿したグチが炎上し傷ついた経験を持つ女性が、数年後、今度は匿名アカウントで他人への不満を発信し、SNSの「共感」にのめり込んでいく姿を描いたコミックである。画面の向こうから浴びせられる言葉に傷つけられたはずなのに、いつしか自分も誰かを傷つける側へ——。SNSに潜む承認欲求の恐ろしさを描いた物語だ。
主人公・ゆきのは、息子のたいちを育てている母親。ある日、ベビーカーでバスに乗ったときに感じた不満を何気なくSNSへ投稿したところ、思いがけず炎上してしまう。見知らぬ人々から寄せられるのは、子連れの母親を非難する言葉の数々。傷ついたゆきのは思わず言い返すも、脅迫めいたDMまで届いてしまい、怖くなった彼女はアカウントを削除する。
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それから数年。息子の成長とともに仲のいいママ友グループができ、ゆきのは再びSNSを使い始める。今度こそ楽しく利用するはずだった。しかし、ママ友たちの投稿を眺めているうちに、小さなモヤモヤが積み重なっていく。そして、「これって子連れ様じゃない?」と匿名アカウントで本音をつぶやいたところ、予想外の反響が。多くの人から賛同され、投稿はバズってしまうのだった。
自分の言葉にたくさんの「いいね」がつき、見知らぬ人たちが「わかる」と共感してくれる。それまで胸の内にしまっていた不満が肯定され、「認められた」ような感覚を覚えたゆきのは、次第にその快感に取り込まれていく。匿名の人間から批判される怖さを誰よりも知っていたはずなのに、自分もまた過激な言葉を発信する側へ回ってしまうのだ。被害者と加害者は、遠く離れた存在ではないのかもしれない。
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誰かに対する小さなグチをこぼしただけのつもりが、予想以上に共感される。もっと反応が欲しくなり、より刺激的な言葉を選ぶようになる。画面の中で得られる「共感」の心地よさと、その先に待つ危うさを描いた本作。タイトルどおり、気づけば「地獄」に足を踏み入れているような、SNS時代ならではの恐怖を伝え、警鐘を鳴らす作品である。
文=甲斐ハヤト
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