
『ガラノノガラ』(ナコ/KADOKAWA)は、裁縫を愛する大柄男性と、創作活動をやめようとしている総柄作家の女性との出会いから始まるものづくりコメディ。好きなものを作る喜びと、「好き」を続けることの難しさを描いた物語だ。
主人公・針山豊成は裁縫が趣味の大柄な男性。自分で着る服を作るほどハンドメイドを愛する彼には「推し」がいる。それが、個性的な総柄を生み出す作家・ガラノだ。ある日、針山が自作の服を着て街を歩いていると、偶然にもガラノ本人から声をかけられる。憧れの作家との夢のような出会いに喜ぶ針山だったが、そこで彼は信じられない事実を知る。なんとガラノは、創作活動をやめようとしていたのだ。
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推しの作品を心から愛する針山は、ガラノに創作を続けてほしいという思いから彼女の引退を阻止するために動き出す。自分が得意とする裁縫を生かし、ガラノが生み出した柄の生地でハンドメイド作品を作り、その魅力をもっと多くの人に知ってもらおうとするのだ。「好き」という気持ちが、別の誰かの「好き」へとつながっていく。ガラノが生み出した柄に針山がほれ込み、その柄を使って新しい作品を作る。それを見た誰かがまた心を動かされる。ひとりのクリエイターが生み出したものが、別の人の手によって新たな形になり、少しずつ世界を広げていく様子は、ものづくりの魅力のひとつだろう。
好きなものを作り続けることは、楽しいことばかりではない。自分がいいと思うものが評価されるとは限らないし、作り続けるためにはお金や時間などの現実とも向き合わなければならない。創作をやめようとするガラノの姿からは、ものづくりをしている人なら一度は直面したことがあるであろう葛藤も見えてくる。一方、針山が素敵なのは、ガラノにただ「頑張って」「やめないで」と言うだけではなく、自分自身も手を動かすところだ。
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誰かが作ったものを好きになること。そして、自分も何かを作りたくなること。「好き」の連鎖が、作る人と受け取る人の背中を押していく。ものづくりの楽しさだけでなく、その苦しさも描きながら、それでも「好きなものを信じる」ことの強さを感じられる作品だ。
文=富野安彦
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