
仕事帰りにスーパーで総菜を買い、ひとりで夕食を済ませる。それが当たり前になっている人は少なくないだろう。『猫待ち古民家のレシピ帖』(沫原ちみ:原作、チャン・メイ:漫画/KADOKAWA)は、そんな日常が1冊のレシピ帖と1匹の猫との出会いによって少しずつ色づいていく物語だ。
50歳シングルでひとり暮らしをする鳥井遥は、仕事や人間関係に大きな不満はなく、平穏ながら淡々とした毎日を過ごしていた。しかしある日、意を決して都心のマンションを離れ、住宅街に建つ古民家へ引っ越すことに。その新居では、前の住人が残していった手書きのレシピ帖と、遥が来る前からこの家に居ついていた野良猫の「みりん」が待っていた。とりあえずこのレシピ帖は前の住人に返そうと思ったが、その持ち主はすでに亡くなっており、そしてそのレシピ帖に書かれている親子丼やポトフといった美味しそうな家庭料理の数々に心を動かされた遥は、持ち主の娘に許可を得て預かることにするのだった。
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警戒心の強いみりんを動物病院へ連れて行こうと奮闘したり、レシピ帖に残された「猫と一緒に食べる猫まんま」を作ってみたりといった料理と猫についてのエピソードのほか、猫好きな上司との温かなやり取りなども描かれて、引っ越す前は単調だった遥の生活が少しずつ変わっていく様子を楽しめる。
また、実際の料理レシピとして使えるのも本作の魅力だ。レシピ帖には家庭で作れる料理が並び、調理手順やちょっとしたコツも紹介されているので、明日の晩ごはんに作ってみたくなる。香りや湯気が感じられるような料理の描写と、表情豊かなみりんの愛らしさが合わさり、ページをめくるたびにお腹も心も満たされていくことだろう。
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ひとり暮らしは気楽である反面、マンネリ化してしまいがちだ。しかし、遥のように何かちょっとしたきっかけによって生活が色づくこともある。古民家で始まった彼女の新生活が、より充実した暮らし方を見つけるヒントになるかもしれない。
文=つぼ子
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