
「人を好きになる感覚がわからない」。その思いは変えられないのに、焦りだけは年齢とともに大きくなっていく。『それ以外の星たち』(原夏見/双葉社)は、恋愛と結婚、出産を当然のように結びつける周りの空気のなかで、自分はどこへ向かえばいいのかと揺れ動く女性を主人公に描いた作品だ。
物語は、ワーキングホリデーで滞在していたロンドンから日本へ帰国することになった、足沢雪の別れ話から始まる。現地で付き合っていた日本人の恋人とは価値観が合わず、ビザの期限も重なって別れを決意。しかしその恋人は納得せずに、日本まで追いかけてくる。到着した空港であらためて別れを告げるが、食い下がりながらも雪を見下すようなことを言う彼に対して一発浴びせてしまう。去り際に彼から放たれた「お前みたいな人間、一生まともな恋愛なんてできない」という言葉が、恋愛という感情がわからない雪に重く心に残る。
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日本での仕事も住む場所すらも決まっておらず、とりあえずノンバイナリーのきょうだい・慶が暮らす部屋に居候として転がり込んだ雪。帰国した手続きで役所に行くと、乗り込んだエレベーターが不具合で停止し、若い男性と小さな子どもを抱えた妊婦とともに閉じ込められてしまう。救助を待つ間に妊婦との会話のなかで「高齢出産」や「タイムリミット」という言葉を聞いたことで、空港で元恋人に浴びせられた言葉を思い出し、そして世間が言う恋愛、結婚、出産という「女性として当たり前の流れ」に対して真っ直ぐに向き合うことのできていない自分に焦りや迷いを感じるのだった。
その後、雪はエレベーターで一緒に閉じ込められた青年との交流、そして慶は過去に恋人だった男性との偶然の再会をきっかけに、ふたりの日常は少しずつ動き始めていく。
第2巻が2026年9月17日に発売となる。「普通」に囚われ、葛藤する雪、そして慶はこの先どんな選択をしていくのか。ぜひその目で見届けてほしい。
文=坪谷佳保
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