※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年9月号からの転載です。
◎今月の編集者
実業之日本社 編集本部コンテンツ開発部チーフ・プロデューサー 村嶋章紀さん

小川哲さんを知ったのは『地図と拳』を読んだのがきっかけです。その後、YouTubeや対談記事を追ううち、小川さんの言葉には論理的な快感があると感じるようになりました。まだ言葉になっていない感覚や関係を、ここまで美しく言語化できる人がいるのか、と。
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実は僕自身、文章を書くことには苦手意識があるんです。小説の書き方の本を読んでも、どこかしっくりこなかった。知りたいのは書き方ではなく、作家は世界をどう見て、その感覚をどう物語や文章にしていくのか。そのプロセスなんです。
そんなときに観ていたのが、ゲンロンカフェの「小川哲の文学BAR」でした。小川さんがさまざまな作家を招き、物語をどう作っているのか聞いていくシリーズです。これは本になると思い、新潮社経由で企画書を送ると直接ご本人から「やりましょう」とお返事をいただきました。
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本にするにあたって意識したのは、単なる対談の羅列にしないこと。何を書きたいのかをどう見つけるのか。誰の視点で語るのか。日常の出来事をどう物語に組み替えるのか。そして、どう文章化するのか。各対談の中核となる部分を抜き出し、どの順番で並べたら「書くまでのプロセス」として読めるのか……。
見出しも含めて構成には半年ほどかかりました。小川さんは本文の文章を中心に見ていただき、こちらは目次や装丁など本の "ガワ”を考える。作業自体は大変でしたが、役割分担がはっきりしていたので、すべきことは明確でした。
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編集者は自分が出す言葉や形の一つ一つに意図を持っていなければならない。本書をつくっていくなかで強くそれを実感しました。500ページを超える対談集なので不安もありましたが、重版して一万五千部に届いています。小川さんも「対談本でその数字はすごいですね」と言ってくださいました。これまで自分が携わってきた本の中でも、自信をもって渡せる特別な一冊になりました。
むらしま・あきのり●大学在学中に『フライデー』『週刊新潮』編集部で記者として活動し、2023年、実業之日本社に入社。養老孟司、横尾忠則、黒柳徹子らを担当。担当作の絵本『あらゆるものがおくりもの』が9月17日発売。
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『こうやって作家は言葉を紡ぐ』
(小川 哲/実業之日本社) 2640円(税込)
なぜこの順番なのか、この視点なのか、この言葉なのか―。小川哲が14人の作家と語りあい、世界の見方、着想、視点、物語化、文章化のプロセスをひもとく対談集。書きたい人にも、読む楽しみを深めたい人にも。
気になる! ポイント
既存のコンテンツを本に編み直す難しさ
まず思ったのは、これだけ手間のかかりそうな対談本をどう成立させたんだろう、ということだった。ゲンロンカフェでの対談がもとだと知って納得したけれど、ただ書き起こせば本になるわけではない。既存のコンテンツを使い直し、本として価値ある形に編み直しているのが上手い。村嶋さんは今、僕の本も編集してくれている人だけど、とにかく行動力がある。作家に会いに行き、大きく手をかけなくても原稿になる素材を取る。そのガッツはすごい。知りたいこと、学びたいことを本にし、出版物として成立させている。ヒットを出す編集者には物量とパワーがある。
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さどしま・ようへい●1979年生まれ。講談社勤務を経て、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。三田紀房、安野モヨコ、小山宙哉ら著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。
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