テレビ東京入社4年目局員・牧島による、連載エッセイ。「新しくて面白いコンテンツ」を生み出すため、大好きなお笑いライブに日参し、企画書作成に奮闘する。これはそんな日常の記録――。

こんにちは。
テレビ東京の牧島俊介です。さて...。
私は将来の夢がない。持ったことがない。だから、今後一生、夢が叶うことがないのが残念である。
今年4月、コント番組『アリフォルニアseason1』の脚本陣と打ち上げにて。深夜0時を過ぎる頃、子どもの頃の夢の話になった。
続きを読む
各々が口々に言う。
「物書きになるのが夢だった」
「コントを書く仕事に就きたかった」
皆、夢が叶っていた。私をのぞいて、歓喜する。幸福の空気を分けてもらい、やり過ごす。
ついに、私も尋ねられた。
「牧島くんの夢は?」
「ないっていうか、普通に家庭を持って穏やかに暮らすとかですかね」
と答えて、内心惨めになる。
「じゃあ、叶ってるんじゃない?」
と言ってもらったが、叶ってはいない。本当は穏やかに暮らすという夢も持っていなかった。
これは、万が一伝記になっても面白くないタイプである。夢なる原動力がないから、自分の人生を生きている当事者意識がちょっと薄い。その時の「なんとなく」の衝動で道を選び続けた、26年の足跡があるだけである。
続きを読む
夢のない人生を選ぶことになったきっかけは、小学生の頃の出来事である。近所の公園で同級生と野球をして遊んでいた時、その彼は「プロ野球選手になりたい」と言った。私は、即座に「無理でしょ」と返した。特段身体能力が高いわけでもない私より足が遅い、などともっともらしい理屈を重ねて追い打ちをかけた。ただ、思ったことを言っただけだった。それと同時に、私の中に、大きな夢を持つのが恥ずかしいという確固たる価値観ができた。
振り返れば、最低なことをしたと思う。だが、夢に突き動かされている同級生は、プロ野球選手を目指し続けていた。
続きを読む
小学校を卒業して以来、一度もその同級生と連絡をとっていない。でも、なんとなく夢が叶いそうか、叶わなそうか気になって何度もネットで調べた。体格が良くなり、足が速くなって、強豪高校に入ったり、プロ野球選手になってもおかしくはない程度の強豪大学に入ったりしていた。現在、プロ野球選手ではない。
どちらかと言えば、叶ってほしくなかった。夢を持っていない自分を肯定したかった。
そして、私は夢に対して斜に構え続けた。夢が叶わなかった場合の精神的ダメージを引き受ける度胸がない。卒業文集には、文系なのに医者になりたいというつまらない嘘を書いた。なんとなく学部を選んで大学へ進んだ。ただ、夢はなくてもやる気はあった。就職活動ではテレビ東京を受け、内定をもらった。
続きを読む
たしかに、高校生の頃から憧れ続けた有田哲平さんとコント番組を作ることができた。でも、当時から夢として直向きに追い続けてきた成果ではない。日々の衝動に駆られて刹那に生きていたら、いつの間にか実現していたのである。一瞬の達成感を味わい、やがて燃え尽き症候群のようになった。夢がないと、目標を達成する瞬間(点)はあるが、夢が叶っている状態(線)はないのだ。
この業界は、夢を叶えて入社した人、夢を叶えるべく働いている人が多い。だが、私は日々の衝動だけで生きている。案外、夢のある人に比べても、意欲が少なくはない。クリエイティビティには駆られているほうのつもりだ。しかし、夢が叶う歓喜も、夢が叶っている充足もずっとない。
続きを読む
今からでも夢が欲しい。でも、子どもの頃から定着した価値観のせいで、照れて向き合うことができない。夢に対してシニカルな態度を取り続けた罰をまだ受けている。
夢はなくとも、夢のような時間を過ごすことはできる。『アリフォルニアseason2』(TVerで第1話配信中)の収録は、まさにそうだった。
season1は、凄腕のコント師・俳優が各々の技術で仕上げていくような作りだった。出演者同士、間合いを探りながらペースを掴んでいく様子もあった。第1話〜第4話へと収録が進むにつれ、グルーヴが出来上がっていく。
続きを読む
有田さんが全話の収録後に、
「みんないい人たちで良かったね」
とおっしゃっていた。日本屈指のベテラン芸人でも、最初は不安があるものなんだと知った。
season2は、仕上がったグルーヴがバチバチに決まっている。完全に『アリフォルニア』というコントチームになっている。出演者同士で演技プランを練って改良を重ねる。出来上がったこのリズム感のまま『アリフォルニア』はずっと続いたら良いな…と心底思った。
深澤辰哉(Snow Man)さんが前回に増していきいきしていた。season1は、ドラマで見る俳優としての深澤さんの延長にアリツグがいたと思う。私はその姿が好きでオファーをしたので、もちろん、素晴らしい出来栄えだと感じていた。しかし、season2は見たことのない深澤さんだった。コント師だった。「あ、こんな大胆に面白くしていただけるんだ…」と思う箇所がいくつもあった。
続きを読む
本当に皆さんの力で、私は良い監督・プロデューサーにならせてもらえたと感じた。夢のようであった。
そんな時間はすぐさま過ぎて燃え尽きる。やはり、私は夢がないから継続的な充足(線)はない。ただ、『アリフォルニア』の脚本陣は夢を叶えようとしている人ばかりである。もうこれからは、夢を持っている人を邪魔したくない。『アリフォルニア』を続けることは、贖罪である。
私の夢のような贖罪を応援してほしい。『アリフォルニアseason2』を観てほしい。
『アリフォルニア season2』放送情報
続きを読む
放送日時:
第1話:9月9日(水) 深夜1:00-1:30
第2話:9月16日(水) 深夜1:06-1:36
第3話:9月23日(水) 深夜1:06-1:36
第4話:9月30日(水) 深夜1:00-1:30
放送局:テレビ東京 ほか
牧島俊介●テレビ東京入社4年目を迎えた現役テレビ局員。高校時代に、お笑いコンビ「虹の黄昏」に出会い、衝撃を受ける。自ら企画した番組は、柴田理恵・マユリカ中谷出演のバラエティ番組『ナキヨメ』、有田哲平主演、Snow Man深澤辰哉、空気階段鈴木もぐら、ロングコートダディ兎共演のシチュエーションコメディ『アリフォルニア』など。
記事一覧に戻る