
普段は多くの人が行き交うオフィスや学校、駅のコンコース、地下道といった、とくに意識もしない場所で、ふと日常からかけ離れたような不気味な感覚に襲われることがある。誰もが一度は目にしたことがあるような特異な空間のことを「リミナルスペース」と呼ぶ。
そんな「リミナルスペース」の不気味さが際立つホラー映画が「バックルームズ」だ。
家具店を営むクラーク(キウェテル・イジョフォー)は、ある日、自分の店の地下室の壁の裏側へと抜けられることを発見する。その“裏側”には、黄色がかった壁の部屋とどこまでも続く通路が連なる異様な空間が広がっていた。
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本作は2022年にYouTubeにアップされた「The Backrooms(Found Footage)」という動画がもととなっている。概要欄には「September 23, 1996」としか書かれていないこの動画は、素性が定かではない人物がカメラを回し、不気味な空間を記録した9分13秒の動画で、以前からネットミームとして存在していた「The Backrooms」という都市伝説にリアリティを与え、「リミナルスペース」の感覚を多くの人に喚起させ話題となった。

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こうした“後に発見された記録映像”という体裁で作られたドキュメンタリーのような恐怖映像は、ファウンドフッテージホラーと呼ばれ、とくにリアルとフェイクの境界が曖昧なYouTubeという媒体では効果的な演出方法である。
映画「バックルームズ」にはそのような背景があるため、フィクションが前提の娯楽映画において、YouTubeの動画の手法をそのまま映画化するのは難しいのではないか、という一抹の不安があった。しかし本作は、YouTubeのドキュメンタリーという手法を捨て、物語に軸足を置いた限定空間で繰り広げられる優れたソリッドシチュエーションホラーとなっていたのだ。
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また、最大の特徴である“バックルームズ”の不気味な感覚も健在だ。クラークの家具店の風景と地続きであるようでいてどこか違和感のある部屋や通路の設計、狂ったパース、そして親しみのあるはずの家具が生み出す配置の違和感など、オリジナルにあった「リミナルスペース」の特異な感覚は映画になっても濃厚に漂っている。
そして巧みな配役にも唸らせる。主要なキャストは主人公であるキウェテル・イジョフォー演じるクラークと、セラピストであるメアリー役のレナーテ・レインスヴェの二人にほぼフォーカスされているが、登場人物と社会との関わりを最小限にとどめることで、物語全体もまた日常とかけ離れた「リミナルスペース」かのような不可思議な雰囲気を纏っている。
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本作の監督を務めたのは弱冠21歳のケイン・パーソンズ監督。
※全米公開時は20歳
16歳のときにKane Pixelsというアカウント名で「The Backrooms(Found Footage)」をひとりで制作してYouTubeにアップしたその人である。
一発アイデアとも思えるYouTube動画から、人間の“記憶”や“観念”といった哲学的なテーマを“バックルームズ”という日常と非日常の特異な境界線に織り交ぜ、映画作品として昇華させた手腕には脱帽せざるを得ない。
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文=すずきたけし
「バックルームズ」

配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:ケイン・パーソンズ
出演:キウェテル・イジョフォー、レナーテ・レインスヴェ、マーク・デュプラス、フィン・ベネット他
2026|アメリカ|126分|英語|5.1ch|原題:Backrooms|字幕翻訳:佐藤恵子 | 映倫:G |
【STORY】
ある日、自らが営む家具屋の地下から異次元へと迷い込んでしまったクラークは、不条理な世界で怪異に直面する。セラピストのメアリーもまた、彼の行方を追ってバックルームズへと足を踏み入れる。この空間はなぜ存在するのか。ここで一体何が起きているのか。
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9月4日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
公式サイト https://a24jp.com/films/backrooms/
公式X https://x.com/A24HPS
公式Instagram https://www.instagram.com/backrooms_jp/
公式TikTok https://www.tiktok.com/@backrooms_jp
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