
愛美は夫・賢二とごく普通の夫婦として、幸せに暮らしていた。しかしある日、突然賢二の両親が事故に遭い、義父が亡くなる。悲しみに暮れる中、義父の葬儀に現れたのは怪しげな男。その男は、夫の兄・聡一だった……。聡一という兄がいること、聡一は高校生の頃から引きこもっていることを愛美は初めて知る。義家族はなぜ聡一の存在を隠していたのか?
『隠された家族』(のむ吉:著、小瀬古伸幸:監修/KADOKAWA)は統合失調症を患う兄をめぐり、家族がどう向き合っていくかを描いた物語だ。本作を監修した精神科認定看護師の小瀬古伸幸さんにインタビュー。精神疾患を抱える家族のサポートにも力を入れる小瀬古さんに、家族が抱えている問題とその解決の糸口、精神疾患に関する近年の研究成果についてまで、広くお話を伺った。
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※統合失調症をはじめとした精神疾患の進行や症状は個人差がありますので、詳細は医療機関等にご確認ください
――そもそも、本作で描かれている統合失調症とはどういった病気なのでしょうか?
小瀬古伸幸さん(以下、小瀬古):統合失調症の診断基準で国際的に広く使われている診断分類は2種類あるのですが、そのどちらでも満たさないといけない要件として幻覚と妄想があります。ですから、「うつっぽい」というだけでは、統合失調症とは診断されません。ただ、幻覚や妄想は統合失調症以外の精神疾患でも生じることがあります。例えば薬物によっても幻覚や妄想が出るというのは有名なところですよね。その他に高齢者では認知症でも妄想が出ますし、発達障害の方でも二次障害として強いストレスがかかると、本来の症状ではないけれど幻覚が現れることがあります。
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妄想にもいろいろな分類があります。うつ病の方であれば「貧困妄想」といって、本当は十分お金があるのに「私にはお金がありません」と思い込んだり、「このお金はあるように見えるけれど、本当はないんです」と話されたりします。一方、統合失調症ではそういう妄想はあまりなく「宇宙人が自分を操作しようとしている」とか、「外に止まっている黒い車は自分を狙っている人なんです」といった妄想が多く見られます。ですから、単純に幻覚・妄想があるから統合失調症と診断するというよりも、薬物使用歴を確認したり、血液検査や脳CTを撮ったり、いろいろなスクリーニングを行う場合は多いです。
――小瀬古さんは患者さんご本人だけではなく、そのご家族向けの本も書かれていますが、そういった活動をされるようになったのはなぜでしょうか?
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小瀬古:これは精神科特有かもしれませんが、ご家族を支援しないとうまくいかないケースが非常に多いと感じたんです。例えば統合失調症と診断された方の場合、本人自ら受診するケースはすごく珍しいんです。「何かおかしい」「苦しい」と感じていても、「言ったらバカにされるんじゃないか」と思うこともありますし、「強い鎮静剤を入れられて動けなくなるんじゃないか」といった精神科への偏見もまだまだあります。うつ病やPTSD、適応障害、双極症のうつ状態などは比較的自ら受診される方も多い印象ですが、双極症の躁状態で非常に活動的になっている方などもなかなか本人からは受診につながりません。
――本人から受診しづらい現状があるからこそ、周囲への啓発や支援が必要だと感じられたということなんですね。
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小瀬古:そうですね。本人が苦しいのはもちろんのこと、一番身近にいる人が実務的な大変さを抱えて、自分の生活がめちゃくちゃになってしまうことがよくありますね。
取材・文=原智香
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