
近年、首都圏を中心に中学受験熱は高まりを見せている。そんな中、中学受験は「頭のいい子が偏差値の高い学校へ行くためのもの」だけでなく、子どもたち一人ひとりが、それぞれの目的を達成するための選択肢にもなっている。「発達障害があるからこそ、中学受験をする」という選択をした4つの家庭の受験体験を描いたコミックエッセイが『発達障害っ子の中学受験』(モンズースー:著、小川大介・橋本圭司:監修/KADOKAWA)だ。作中では、異なる特性を持つ4人の子どもたちとその家族の体験を、「受験を決意した理由」「塾・学校選び」などテーマごとに紹介。医師と中学受験専門家、それぞれの視点から書かれたコラムも掲載され、「なんのために中学受験をするのか」という本質にも迫った一冊だ。本書を監修した教育家の小川大介先生にインタビュー。30年以上にわたって中学受験指導にあたってきた小川先生に、発達障害のある子どもの中学受験に加え、定型発達児の中学受験についても、広くお話を伺った。
※発達障害という言葉は近年、“神経発達症”という名称に変わっています。本記事ではわかりやすい表現として発達障害と表記しています。
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――入試のスケジュールを組むのも親として重要な任務と感じますが、発達障害のお子さんがいる親御さんとして特に注意すべき点はありますか?
小川大介先生(以下、小川):まずそのお子さんの特性によって、注意すべき点は違うと思います。例えばASD傾向のあるお子さんは、決めたことをその通りに行動しようとする傾向が強い。となると日によって試験開始時間が午前と午後というように大きく違ったり、毎日違う学校を受験するスケジュールは混乱しやすいので、同じ学校を複数回受験する方が、相性がいいと思います。
反対にADHD傾向のあるお子さんの場合は、同じことが続くと集中力が落ちる傾向があるので、目先を変えて複数の学校を組み合わせた方がいいこともあります。また体の感覚が強いお子さんは、受験日の間隔をあけると気が緩んでしまう場合があります。あえて受験日を連続で組んで一気に走り抜ける方が、力が出る傾向が高いと思いますね。
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これは発達障害のあるお子さん以外にも言えることですが、入試日程を組むためには、本人のメンタルをよく観察することが大切です。夏休み以降の模試はどうしても弱点克服に目が行きがちなんですが、模試の時間をどう過ごしたのか、本人の体験をしっかり把握して本人への理解を深めておくのも、親御さんがやらなければならない重要な柱のひとつです。
――不合格という結果になることは、中学受験では避けられない展開だと思います。親として、どういった対応が望ましいでしょうか?
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小川:伝える前に、親自身が自分を整えておくことが重要です。発達特性のある子たちは、つまりアンテナ感度が高い子たちなので、空気でもうパッと察してしまいますから。親の心の中で「不合格は、『うちの子がダメだった』ということをまったく意味しない」と本気で信じておくことが大事です。不合格という結果は、あくまで、その日に本人が答案用紙に表現できた内容が、学校の合格基準と違っていた、あるいは当日出された問題、つまり学校側が見たいと思った力と、本人が発揮できる力が噛み合っていなかったということに過ぎません。それが“縁がなかった”ということです。不合格だからといって、この子がそれまでにやってきた努力、本人が頑張ろうとした事実は何も変わらない。この子の価値が下がったわけでも否定されたわけでもないし、明日からこの子が成長を止めるわけでも絶対にない。このことは、落ち着いて考えれば誰にでも分かる。でも、不合格の結果を見たときの親はこの点の理解がぐちゃぐちゃになってしまいがちですから、まずは自分を整えるのです。
――中学受験は親の介入が大きいだけに、自分も食らって悲しくなってしまいそうです。
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小川:悲しくなっていいんです、当たり前です。自分の素直な思いに嘘をつかないことですね。そこができていれば、言葉自体はあとで振り返って「もうちょっと言い方あったな」とおっしゃる親御さんも多いのですが、意外と子どもたちに伝わっているものです。うまいこと言うとかは、実はあまり関係ないんです。親がここで後悔したり、誰かの責任にしようとしたりすると子どもの明日につながらないので。自分自身の思いを自分で受け止めるということは、親御さんに頑張っていただきたいです。
取材・文=原智香
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小川大介
教育家・才能タイプ子育て研究所 所長。京都大学法学部卒業。30年以上にわたる中学受験指導と8000回を超える親子面談を通して、子どもの学び方と行動の傾向を90タイプで捉える独自の「才能タイプ理論」を確立。一人ひとりに合った子育て・学力育てを実現する「才能タイプ子育て」を提唱している。成績向上だけでなく、子どもの自信、主体性、学習意欲、親子関係の改善までを支援。自らも一人の親として実践し、息子は灘・開成・筑駒に合格後、京都大学医学部に在学。著書・監修書28冊、メディア出演700回超。
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