
「小受」。就学前の子どもたちが、名門小学校への入学を目指す小学校受験のことだ。未就学児たちの進学塾とも言える幼児教室の送迎や、親子揃っての面接など、保護者がかかわるタスクの多い小受は、家族全員にとっての戦いでもある。しかし、中学受験や高校受験に比べると受験者は少ないため、小受とはどんなものなのか詳しく知る人は多くないだろう。
『君の背中に見た夢は』(外山薫:原作、たちばな豊可:漫画/KADOKAWA)は、そんな小学校受験に挑む家族の物語である。「子どもの将来の選択肢を増やせるのは自分だけ」という責任を感じながら、仕事との両立や夫との関係で葛藤する母親・茜の姿は共感必至だ。
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原作小説の著者であり、慶應義塾大学出身という経歴を生かして教育分野での発信を続ける作家の外山薫さんと、3人の子どもを育てながら漫画家として活躍するコミカライズ版の著者・たちばな豊可さんのふたりに、本作に込めた想いや制作の裏話について伺った。
※個人の体験、お話をもとにインタビューを行っています。ご了承の上お読みください。
——作中では、東京都で小学校受験の応募者数が20%近く伸びているという描写がありました。近年の小学校受験の傾向について感じることはありますか?
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外山薫さん(以下、外山):小説を書いたのはコロナ禍のリモートワークが多い時期でした。実は、リモートワークとお受験ってすごく相性がよくて。仕事を中抜けして子どもを幼児教室に送迎、みたいなことができていた時代。そのため、コロナ禍が明けてからは一時より小受ブームは落ち着いた感じがします。
一方で、中受をさせたくないから小学校受験をする、という意志を持つ方は少なくない印象です。みんなが有名中学に入れたいわけではなく、公立中学校が怖いから、それを回避するために受験する、という方も多い。ただ、小学校受験もそれなりに大変なので、貴重な夏休みやお正月を潰してまでお受験をさせる必要があるのか…というモヤモヤを抱えている人たちが小学校受験組には多いんじゃないか、と。
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——子どもの小学校受験に対して「我が家は記念受験で…」と形容する保護者が比較的多いようですが、これはなぜだと思われますか。
外山:取材でも、半分以上のご家庭が「我が家は記念受験」と言っていました。中学受験だと「地元の公立中が荒れているから」「うちの子は女子校のほうがいいから」というハッキリした理由が言えますが、小学校受験では子どもより保護者の気持ちのほうが強いことも多く、理由を伝えづらいのかもしれません。
代々名門校というお家柄ならわかるけど、そうでもない場合は小受の土壌が育っていないことも多い。そういう環境だとなかなか胸を張って言えず、ちょっとした後ろめたさを抱えてしまう。これは高校受験や大学受験には見られない傾向だと思いますね。
取材・文=吉田あき
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