
「お食い締め(おくいじめ)」病気や高齢で口から食べられなくなった人に対し、最後まで“食べること”へ丁寧に向き合えるように、本人や家族を支えていく食支援のことである。この言葉を考案し20年以上前から活動しているのが、言語聴覚士で摂食嚥下障害領域(飲み込み)を専門とする牧野日和先生だ。
『お食い締め 口から食べられないアナタへ ~言語聴覚士が見たそれぞれの選択~』(牧野日和(愛知学院大学教授):原案・監修、かなしろにゃんこ。:漫画/竹書房)には、牧野先生がこれまで出会ってきた患者や家族の葛藤が描かれている。
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もう一度焼き肉を食べたいと願う、寝たきりの男性。生きる気力をなくした高齢の母に、なんとか好物を食べてもらいたい娘。「食べること」にまつわる最期の時間を、牧野先生はどのように見つめてきたのだろうか。原案者・監修者としての想いを伺った。
——「お食い締め」を進めるなかで大切にしたほうがいいことはなんでしょうか。
牧野日和先生:ポイントはふたつあります。
ひとつめは、本人が元気なうちに、食べられなくなったらどうするのかを話しておくこと。これを「人生会議」といいます。厚生労働省ではアドバンスケアプランニングと命名され、世界的にはACPともいいますね。多くの場合、今は食べているけど次第に「座るのがつらそうになった」「食べ物でむせた」ということが増え、こうなってくると呼吸がしにくくなっているので無理に食べさせません。そうすると痩せてきますから、だんだん死に近づいていく。これは自然なことです。
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「お食い締め」では、「まだ食べられる今の時期を大事にしましょうね」としています。そのなかで、多くの家族は本人が死んでいく過程を理解して、近々やってくる死の心づもりができます。ただ、突然その日がやってくる人もいますから、これひとつだけじゃダメなわけです。
ふたつめのポイントは、2002年に世界保健機関(WHO)が緩和ケアについて定義した「癒しの範囲」に沿うことです。のちに厚労省が、人生最終段階の医師の決定プロセスの中に「患者の意思を尊重しましょう。患者の意思がわからないときは患者が何を望むのかを想像しながら家族が代理で決める」と加えたので、僕はそこを引き合いに出します。
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その人がラクに楽しく食事の時間を過ごせることを国も定めていますから、本人が食べられる範囲にしましょう、と。
ご家族が「口の隙間から無理やりにでも食べ物を入れてください」とおっしゃる気持ちもわかるんです。食べているうちは患者の肌ツヤがいいですし、愛する家族には長生きしてほしいですからね。私だって医療従事者として無理やり口に入れたいときもあります。でも「自分も同じことをされたいですか」と考えると、やはりそうじゃない。本人の意思をなるべく尊重できるようにしたいですね。
取材・文=吉田あき
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