
■帯もバーコードもない? 『ファイブスター物語』をめぐる“幻の本”
『ファイブスター物語』の40周年を記念して、ある“幻の本”が増補復刻された。
その名は『MAMORU MANIA Reprinted Edition』(井上伸一郎、永野護/星海社)。1997年に刊行されたこの本は、長らく入手困難となっていた一冊だ。
オリジナル版は表紙に永野護のイラストが描かれ、そこに「MAMORU MANIA」と小さく記されているだけ。帯はおろかバーコードすらない本だった。今回刊行された増補復刻版の「まえがき」で、井上伸一郎氏自身が当時の本について振り返っている。
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井上氏は、デザイナー・永野護氏の初代担当編集者として、「月刊ニュータイプ」などを通じて永野氏の仕事を間近で見てきた人物。『MAMORU MANIA』には、そんな井上氏が綴った『ファイブスター物語』誕生の背景や、永野氏との仕事の日々に加え、富野由悠季監督や「月刊ニュータイプ」初期の編集長の文章も収められている。
■40年前の記憶が、2026年によみがえる
今回の増補復刻版ではオリジナル版を再現するとともに、井上伸一郎氏による新規書き下ろしの「まえがき」、永野護氏による「あとがき」、新規イラストなども追加されている。
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なかでも興味深いのが、井上氏が2026年3月、連載開始から40年を迎えたタイミングで書いた「まえがき」だ。
1986年当時『月刊Newtype』の編集者として永野護氏の担当を務めていた井上氏にとって、『ファイブスター物語』第1話の原稿を手にした日は、今も鮮明に記憶に残る出来事だったという。その日の興奮を振り返りながら、井上氏は40年後の現在から『ファイブスター物語』と『MAMORU MANIA』を見つめ直している。
ここでは、その「MAMORU MANIA Reprinted Editionへのまえがき」より、当時の記憶と本書の成り立ちが伝わる部分を一部抜粋して紹介する。
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■『MAMORU MANIA Reprinted Editionへのまえがき』(一部抜粋)
「や、やられた! やられたよ、ダグラス・カイエン!」
「ファイブスター物語」の読者の皆さまにはこれ以上の説明は無用だろうから、私がなぜこんな叫び声を上げているかについての言及は、あえて必要ないはずだ。
長きに及んだ「魔導大戦」もいよいよクライマックス。いま永野護の筆はノリにノッている。
この原稿を書いている現在――洋画ならPresentと字幕が出る場面――は2026年3月。「ファイブスター物語」の連載開始からちょうど40年が経った。自分の記憶のなかには、あの激動の日々が生々しく息づいている。本書のなかに記されている通り、連載第1話の原稿を手にしたときの興奮は、いまでも忘れることができない。あの芝居がかったセリフを電話で永野護に伝えたことを含めて、私にとってまさに魔法の1日だった。
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「月刊Newtype」の編集者として、そして永野護の担当者として過ごした日々のなかでも、最も鮮烈な思い出だ。
そう、連載開始40周年。この節目のタイミングで、この「マモルマニア」が増補復刻版として刊行されることとなった。
本書について簡単に説明しておかなければならない。オリジナル版は1997年に出版されたが、長らく書店店頭から消え、「幻の本」のような存在だった。
実に不思議な造本で、表紙には永野護の絵――タイトルは「THE SILVIS RIDE」――の上に縦書きで小さくMAMORU MANIAと記されているだけ。帯がないので、開いてみるまで、読者は何が書かれているか予想することができない。要するに本の存在をあらかじめ知っている人間――すなわち永野護と「ファイブスター物語」のファン――のためだけに作られた、混ぜ物なし果汁100%的な作りの書籍だ。いや、正確には書籍とは言えないだろう。表4にはバーコードもない。現在の基準では書店で流通することは不可能だ。いったいどうやって流通させていたのか。もしかしたらグッズ扱いだったのか。著者であるはずの私自身もわからない。
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ちなみに「MAMORU MANIA」という言葉は、1960年代にビートルズを熱狂的に支持する若者たちのことを指す「BEATLE MANIA」から拝借したものだという。
オリジナル版の編集と装丁は佐藤良悦によるもの。「ファイブスター物語」が連載されている「月刊Newtype」の実質的編集長――周りくどい表現で申し訳ない。「Newtype」創刊時の株式会社ザテレビジョンから刊行される雑誌の編集長は、「週刊ザテレビジョン」をはじめ、公式表記ではすべて井川浩となっている。しかし実際に編集長として雑誌を作っていたのは公式には副編集長とされる佐藤良悦たち株式会社ザテレビジョンの編集者たち。ここで実質編集長と記すのはそのためだ――「マモルマニア」刊行時には自身の会社トイズプレスを設立していた。掲載された私の原稿もトイズプレス社で刊行されていた不定期誌「キャラクターズプラス」などで連載していたものだ。
「マモルマニア」は私の原稿が基盤にはなっているが、富野由悠季監督はじめ「月刊Newtype」歴代編集長の原稿などが収められ、書籍ではなく雑誌の感覚で編集されている。創刊41年を迎えた「月刊Newtype」の基本フォーマットを作ったのが佐藤良悦であり、彼は雑誌作りにおいては天才的な才能を持っていた。この本が書籍的ではなく雑誌的であるのも、そのためなのだろう。
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オリジナル版に掲載されている私の原稿は1991年から1994年に書かれたものだが、この増補版には2001年に永野護と物語の関係をテーマに書いた原稿を追加で掲載することとした。この文章のテーマを拡大解釈すれば、永野護が2013年に起こした「ファイブスター物語」の大転換を予言しているかのようにも読め、書いた自分自身が怖くなったからだ。
さらにこの長い前書きでは、オリジナル版「マモルマニア」刊行後のエピソードをいくつか期しておきたい。
(続きは本書にて)
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