
5年にわたる不妊治療でも子どもを授からなかったため、仕事に専念することを決意したちはる。しかし大きなプロジェクトの責任者に抜擢された矢先、妊娠が発覚する。「タイミング最悪」と思ってしまったことに罪悪感を覚えつつも、育児と仕事の両立を決意。しかし、つわりも重く、うまくいかないことの連続で……。
自身も経験した“産後うつ”をテーマに『もう3年、産後うつ。 消えたい衝動から抜け出せない』(青柳ちか/KADOKAWA)を描いた著者・青柳ちかさん。自身が経験した産後うつや、本作に込めた想いについて話を伺った。
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※個人の体験をもとにインタビューを行っています。症状など、詳細は医療機関等にご確認ください。
――産後うつというテーマで漫画を描こうと思ったのはなぜですか?
青柳ちかさん(以下、青柳):私自身が過去に経験した産後うつの苦しさを、何かの形で描きたいと思っていました。過去にコミックエッセイで少し産後うつに触れたことがあるのですが、当時のコミックエッセイは笑いや楽しさを提供するものとしての位置づけで、ネガティブな体験を赤裸々に綴るものは少なかったんです。そこであまり暗いものにせず、コミカルに描こうという編集方針になり、実態をリアルに描くことはできませんでした。今は、産後うつの認知度も上がり取り巻く状況もアップデートされてきました。だからこそ、改めて自分の体験をベースに、現在の状況を取り入れながら「産後うつ」の実態を描きたいと思いました。
また産後うつと言っても状況は本当に人それぞれです。そして認知度が上がってきたからこそ「ああ、みんななるやつね」といった感じでその深刻さが軽んじられることもあるなと。それで、こんなに深刻で長引いてしまう産後うつもあるということを描きたいと思いました。
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――青柳さん自身が産後うつになった当時の状況について教えてください。
青柳:20年ほど前の話になるのですが、当時も今と同様、漫画家とイラストレーターの仕事をしていました。産前は最後の締め切り日が予定日の2週間前だったので、ヒヤヒヤでした。そして私もちはる同様、出産後も同じように仕事を続けていけると当然のように思っていました。ただ、ちはると違うのは、私は会社員ではなくフリーランスで、ひとつの仕事が終わったら一旦失職、また新たな仕事を始めるという点です。会社員よりも自由が利く点はよかったのですが、「自分は出産後もまた必要とされるだろうか」という不安がすごくありました。会社員でもフリーランスでも、出産で仕事を休むことへの不安はあると思うのですが、その度合いが高かったです。
――産後うつになった原因はなんだったのでしょうか?
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青柳:まずは小さな不安が積み重なったことでしょうか。先に話したような「次も仕事があるだろうか」という不安に加え、「産後すぐに働かないといけないんじゃないか」という不安もあって。漫画家というのはハードな職業で、売れっ子の作家さんも「入院しながらも描いていた」というエピソードを持っていたりするので、「どんな状況であっても休載は許されない」と思っていたんです。実際に「産後はしばらく休むかも」と友人に言ったら「漫画家に産休なんてないでしょ?」と言われたこともありますし、私自身まだそこまで名前が通っていなかったからこそ「産休・育休なんて言っていないで努力しなきゃ」と思っていました。そうした不安が積み重なった上に、ホルモンの変化等いろいろな要因が重なって、妊娠後期にパニック発作を起こしてしまったんです。しかし、それがパニック障害(パニック症)とは気づかず、妊娠の症状だから子どもを産んだら解決すると思い込んでいました。結果、メンタルをケアすることなく出産となり、産後1か月でうつが来ました。
妊婦のパニック障害というのは珍しいことではなくて、アメリカの研究によれば妊婦の約15.8%*が経験するものだそうです。(*星和書店『ママブルーを乗り越えるために 産前産後のうつと不安の理解とケア』2021年より)
取材・文=原智香
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