
映画「ドラマなふたり」は、可笑しく、恐ろしく、そしてベスト級の“居心地の悪い”傑作であった。
ある日、カフェでドラマのような、運命的な出会いをしたチャーリー(ロバート・パティンソン)とエマ(ゼンデイヤ)は、互いに認め合い、愛し合う非の打ち所がないカップルだった。また二人の職場や友人たちとの関係も良好で、7日後に迫った結婚式までなに一つ問題はなかった。
しかし、チャーリーとエマの友人であるレイチェル(アラナ・ハイム)と夫のマイク(ママドゥ・アティエ)の四人で軽い気持ちで始めた“最悪の秘密”を打ち明けるゲームが、二人の結婚までの道のりを狂わせてしまう。
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ロマンスコメディと思わせるほどの軽妙なノリと笑いを誘うエピソードから始まる本作は中盤で急転直下。スリラーへと暗転し、エマとチャーリー、二人の関係が崩れ窮地に陥る様は息が詰まるほどの居心地の悪さである。
そう、この「居心地の悪さ」こそ本作の最大の魅力だ。

この「居心地の悪さ」を生み出したのはほかでもない、監督であるクリストファー・ボルグリの作家性だろう。ノルウェー出身のボルグリは「シック・オブ・マイセルフ」(2022年)、「ドリーム・シナリオ」(2024年)と立て続けに話題作を放っているが、この二作と「ドラマなふたり」に共通するのは凍りつくほどの「居心地の悪さ」である。
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「ドラマなふたり」ではエマの“最悪の秘密”の告白によってチャーリーがエマに抱いていた愛と信頼が疑心と不信に裏返っていくが、その後のチャーリーの行動はどれも裏目になり、隠し事や嘘で取り繕う姿はとてもいたたまれない。結婚式を控えた二人への祝福ムードがひっくり返る様は血の気が引くほど「居心地が悪い」のだ。
本作で描かれる「居心地の悪さ」は同監督作の「シック・オブ・マイセルフ」での強い承認欲求から自らを破滅へと導く主人公女性の行動や、「ドリーム・シナリオ」でニコラス・ケイジが演じた大学教授の虚栄心に支配された姿と共通する監督の作家性だろう。とくに「ドラマなふたり」で描かれる結婚式のシーンは映画史に残したいほどの“居心地の悪い”クライマックスである。
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またボルグリ監督の手腕がもっとも発揮されていると感じたのは、何気ない会話のシーンだ。とくにエマとチャーリー、友人のレイチェルとマイクの四人による“最悪の秘密”を打ち明ける20分ほどのディナーシーンは、舞台劇のような濃密な会話劇として構成されている。和やかな雑談からジョークを言い合い、いつしか得体のしれない張り詰めた空気が漂い始め、そして場が凍りつく、その空気の変化を捉えたシークエンスもまた、素晴らしく“居心地が悪い”。こうした弛みのない、容赦ない会話劇は本作の魅力のひとつとなっている。
そして葛藤や虚栄心、猜疑心といった人間の心の奥の僅かな機微を描く本作の中で特筆すべきなのは、悲劇の中に喜劇を見出してしまうことだ。
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悲劇の中に喜劇を見出し、喜劇の中に人間の悲しさを浮かび上がらせる悲喜劇は、人間の本質を見つめる確かな力量がなければ成立しない。そうした意味で「ドラマなふたり」は、ボルグリ監督の作家性が色濃く表れた、悲喜劇の傑作であるといえよう。
文=すずきたけし
映画情報
https://happinet-phantom.com/drama/

監督・脚本:クリストファー・ボルグリ
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製作:ラース・クヌードセン、アリ・アスター
出演:ゼンデイヤ、ロバート・パティンソン
ラナ・ハイム、ママドゥ・アティエ、ヘイリー・ゲイツほか
2026|アメリカ|105分|英語|5.1ch|英題:The Drama|字幕翻訳:牧野琴子 | G
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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