
『酒蔵かもし婚』(菅原じょにえる、増田晶文:監修/新潮社)は、専業主夫を夢見る婚活男子が、婚活パーティーで出会った女性をきっかけに日本酒造りの世界へ飛び込んでいくラブコメディ。恋愛と日本酒という組み合わせを、軽快なテンポで楽しめる作品だ。
主人公は24歳の松田元気。将来の夢は専業主夫で、日々婚活に励むものの結果は連戦連敗だった。そんなある日の婚活パーティーで、ひときわ目を引く女性・涼と出会う。彼女に惹かれた元気は酒の勢いもあって、なんとその場でプロポーズ。しかし酒に弱い元気はそのまま気絶し、目を覚ますと涼の実家にいた。そこで涼から、親族に「婚約者」として紹介されたうえに、「鮎原酒造の次期蔵元にしたい」と宣言されてしまう。
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専業主夫志望の男性と、酒蔵を継ぐ女性。そんな現代的な男女の組み合わせも面白いが、本作のもうひとつの主役となるのが「日本酒」である。元気は涼や酒蔵の人々と関わっていくなかで、日本酒がどのように造られているのかを知り、その奥深さに引き込まれていくのである。長年受け継がれてきた技術や蔵の歴史、そして造り手たちの思いが、一杯の酒へとつながっていることを知るのである。
そして、元気にとって酒造りを知ることは、涼が背負ってきたものを知ることでもあった。勢いから始まったふたりの関係が、同じ目標に向かうことで少しずつ変わっていく過程に、ラブコメとしての魅力がしっかりと詰まっている。
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2026年9月9日(水)発売の第3巻では、元気と涼が「新商品をつくりたい」と、新たな挑戦へ踏み出す様子が描かれる。ところが、涼の継母・浩子から、その酒が既存の「雷雨」を超えられなければ婚約を解消するという厳しい条件を突きつけられてしまう。ふたりは伝統的な製法「山廃造り」で勝負することを決め、元気もさらに酒造りの面白さに目覚めていく。
奥深い日本酒の世界を、元気と一緒に知っていけるのも本作の魅力だ。専業主夫志望のピュアな青年と、老舗酒蔵を背負う跡取り娘。ふたりの恋はどのように醸され、どんな味わいに仕上がるのか、最後まで目が離せない物語だ。
文=甲斐ハヤト
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