※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年9月号からの転載です。

「私の読書傾向からすると、異質な一冊です」
のんさんが出合ったこの小説は、悪意と毒が濃厚に香る連作短編集。耽美でクラシカルな雰囲気に心奪われたという。
「品格ある世界観の中に、人間のドロドロしたえぐさが描かれています。大好きなイラストレーター・宇野亞喜良さんの世界と近いものを感じ、宇野さんが描くどこか不機嫌そうな人々を登場人物に重ねて読みました」
続きを読む
5編の収録作の中でも、のんさんのお気に入りは「儚い羊たちの晩餐」。ある令嬢が、料理人に作らせた戦慄の一皿とは。
「贅を尽くした料理の描写が、素晴らしいんです。性格の悪い人が出てくる作品は好きですね」
普段読む小説は、青春ものが多いそう。共感性羞恥を誘われる作品を、読むのが好きだというが……?
「『そこまで書かなくてもいいのに』と思うくらい、恥ずかしさやみじめさ、青さをさらけ出した小説を読むと、心臓を撃ち抜かれます。自分の過去を思い出して、『あの時の私、痛かったな』ってのたうち回るような感覚をあえて味わいたくて。役者としても、人間の滑稽さ、情けなさを演じるのが面白いんですよね」
続きを読む
そんなのんさんが、映画『平行と垂直』に出演。自閉スペクトラム症(ASD)の兄とカウンセラーの妹、大阪で暮らすふたりの絆を描いたヒューマンドラマだ。
「いろいろな困難がありながらも、ふたりが一生懸命生きているのが尊いんです。脚本を読んで、心がじんわり熱くなりましたし、世の中に届ける意義のある作品だと思いました」
のんさん演じる希は、兄の大貴と支え合って生きている。だが、希の結婚が迫り、兄妹間にさざ波が……。
続きを読む
「ASDについて学んだことはありますが、そのきょうだいがどんな状況に置かれるのかまでは考えたことがありませんでした。ふたりが兄妹だという点が重要だと思い、実際に希と同じような立場の方にお話を伺ったうえで演じました。希は、子どもの頃はあくまでも妹でしたが、大人になるにつれて大貴の姉のようになっていくんですよね。『大貴のために』と頑張っている一方、自分が追い詰められると『大貴のせいだ』と思ってしまう。でも、大貴だけでなく、希だってお荷物なんだと気付いた途端、気が楽になる。そんな現金なところにくすっと笑いつつ、グッときました。みんなで大切に作ったので、ご覧いただけると嬉しいです」
取材・文:野本由起 写真:TOWA
続きを読む
ヘアメイク:菅野史絵 スタイリング:町野泉美 衣装協力:トップス2万3100円、スカート4万2900円(ともにRUMCHE contact@rumche.com)、左耳イヤーカフ5万2800円、リング3万8500円(ともにnorme ☎06-6377-6711)、シューズ(スタイリスト私物) *すべて税込
のん●俳優・アーティスト。音楽、映画製作、アートなど幅広いジャンルで活動。22年公開の映画『さかなのこ』で第46回日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞。他の出演作に、ドラマ『幸せカナコの殺し屋生活』『MISS KING / ミス・キング』など。10月18日から全国ツアー『のん自由(10)ツアー2026』を開催予定。
続きを読む

『儚い羊たちの祝宴』
(米澤穂信/新潮文庫) 737円(税込)
夢想家の令嬢たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の2日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、4年目にはさらに凄惨な事件が起き……。「バベルの会」をめぐる5つの事件を描いた、連作ミステリー短編集。

続きを読む
映画『平行と垂直』
監督:小林聖太郎 原案・脚本:山野 海 音楽:富貴晴美 企画:安田章大 出演:安田章大、のん ほか 製作幹事・配給:東映ビデオ 8月28日(金)全国公開
●清掃の仕事に就き、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送る自閉スペクトラム症の大貴。カウンセラーとして働きながら、大貴とともに生きてきた妹の希。変わらないと思っていた日常は、希の結婚話をきっかけに静かに揺れ始める。人生の節目を迎え、兄妹がこれまでとこれからを見つめ直す物語。
記事一覧に戻る