作家やクリエイター、お笑い芸人、音楽アーティストなど、多彩なジャンルで活躍する人たちが、心に残る一冊をセレクトして、自身の言葉で紹介! 本を選んだ理由やそれぞれならではの視点を通して、本との新しい出会いや、読書の楽しみを届けます。

ガールクラッシュ――それは女性から憧れられるような媚びない力強さを持つ女性を指す言葉だ。
K-POPが定着し、サバイバルオーディション番組が流行したことにより、メジャーアイドル界の空気はだんだんと変化している。以前であれば、アイドルは疑似恋愛の対象として消費されることが多かったけど、今は生き方に憧れを抱いたり共感したりするようなアイドルや楽曲が増えた。
続きを読む
そして何より、どのグループもスポ根的な頑張りによって、圧倒的なパフォーマンス力を身につけている。わたしは王道のいわゆるアイドルらしい「かわいさ」も大好きだし、近年主流になっているようなパフォーマンス力を重視したスタイルやそこに至るまでのすべての努力も、とってもとってもアイドルを感じて大好きだ。
アイドルという職業の良さって、表面に出たものの輝きだけじゃなくて、その根本にある人間そのものが魅力になることだから、誰かの希望になるならどんなスタイルも成立するのが素敵。
続きを読む
最近、メジャーアイドルの現場に行くと「元気や勇気をもらって、明日から仕事を頑張るんや!」というような雰囲気をまとった、いかにもバリキャリのお姉さんがたくさん来ていて、勝手にグッとくる。いや〜、アイドルって最高!
そんなアイドル、K-POP、サバ番が好きな人、そしていつでも自分を武装して強がって生きているあなたにオススメしたいのが、アニメ化も決まっているタヤマ碧の『ガールクラッシュ』。この漫画は、勉強・運動・容姿すべてが揃ったダンス部の高校生、百瀬天花(ももせ・てんか)が主人公の物語だ。
続きを読む
天花の原動力は辛い時に救ってくれた同級生の男子、湊晴海(みなと・はるみ)にふさわしい人になること。だけど、晴海はおなじく同級生でバイト先も一緒の、K-POPアイドルを目指す女子、佐藤恵梨杏(さとう・えりあん)に惹かれている。ストイックで誰からも憧れられる天花は、決して目立つとは言えないがまっすぐな気持ちを歌とダンスで表現できる恵梨杏に圧倒され「全部かっさらっていかれそうな予感」を感じて、恐怖する。

続きを読む
いくらキラキラして見えてもどれだけ努力しても、大事な場面で報われない虚しさ、そして強い人間だと思われがちな自分の陰にある弱さや醜さ、そのすべてが天花を襲う。
読みながら、わたしの頭の中ではJuice=Juiceの『「ひとりで生きられそう」って それってねえ、褒めているの?』が鳴り止まなかった。天花のような努力家でパーフェクトに見える人じゃなくても、人生って残酷だからこういう報われなさに直面する瞬間って、誰にでもぜっっったいにある。少なくともわたしは大共感しながら読んでいた。
天花はそれでもまだ戦う。そして、「あなたが欲しいものを私が手に入れる」と、恵梨杏と共に韓国へ行き、K-POPアイドルのオーディションを受ける決意をするのだ。でも、そのオーディションでも、受かったのは恵梨杏だけだった。
続きを読む
だけど、天花はオーディションの中で、好きなことで本気で悔しくなれる喜びや、自分のために努力する気持ちよさを知った。そして、新たな居場所や仲間、そして自分らしさを求め、天花は本気でK-POPアイドルを目指す決意をするのだ。


人生って、何がきっかけで好きなことと出会えるかなんて本当にわからない。だからこそ、夢のかけらをきちんと掴んで離さなかった天花は、もう既に誰かに勇気を与える強い存在「ガールクラッシュ」であると言える。考え方としてはありきたりかもしれないけど、本当の強さを求めることや、自分への愛情を常に忘れずに両足で立つことを実践していくのって、そんなに簡単なことじゃないから。
続きを読む
この漫画は、天花だけじゃなく強く生きようとするあらゆる人間の弱さを描ききっている。でも、だからこそ、強くあろうとする姿勢に勇気をもらえる。
韓国の芸能事務所で行われる月末評価という月イチの実技テストのシーンは実際にオーディションを観ているかのような緊張感があるし、その中で描かれるダンスには目を奪われてしまう瞬間が何度もあって、心の底から魅了される。タヤマ先生の絵は、あまりにも美しくて、力強くて、最高!

続きを読む
天花を含めた登場人物たちが自分らしくあることや好きなことを諦めないかぎり、わたしももう少しだけ頑張れる気がする。力強く生きることを諦めないあなたも、きっとそう思うはず。『ガールクラッシュ』、そのタイトルに負けない素敵な漫画だから、もっとたくさんの人に手にとってほしい。
◆ナツイさんが紹介した本
『ガールクラッシュ』(集英社)
【プロフィール】
ナツイ

平成レトロ直撃世代のイオンタウン生まれヴィレヴァン育ちのエッセイ・コラムニスト。元書店員。SNSでエッセイ、またエンタメやサブカルに関する発信をおこなっている。2025年にアンソロジーのZINE、しりひとみ編『死んでないけど走馬灯』に参加。著書に『サブカルをお守りにして生きてきた』がある。
https://x.com/natsui_tanoshi
記事一覧に戻る