
8月14日より『オークストリートの異変』(配給:東和ピクチャーズ・東宝)が日米同時公開中だ。先に結論を申し上げておくと、本作は「80年代の娯楽映画の魅力」が詰まっていて、めちゃくちゃ面白い! その時点で『グーニーズ』や『インディ・ジョーンズ』が好きな人は観に行けばいい。
さらに重要なのは“恐竜(怪獣)映画”であること。しかも、後述するようにホラー映画作品で名を揚げた監督が手がけたこともあって“怖さ”に手加減がなく、90年代の映画『トレマーズ』や『ジュラシック・パーク』よりも“ちょっとだけ容赦がない”塩梅の刺激的な傑作になっていたのだ。
ファミリー向け映画にギリギリ収まる(少し逸脱した?)バランスに

本作の日本でのレーティングはG(全年齢)指定で、森川智之、坂本真綾、早見沙織、木村皐誠という豪華声優陣による吹き替え版も公開されており、何より内容は「普通の家族が住宅地に出現した恐竜たちから逃げ惑うサバイバルアクション」とシンプルだ。純然たる「ファミリー向け映画」であると断言しよう。
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何より80年代の娯楽映画らしいハラハラドキドキのシチュエーションがたっぷり用意されており、それらの映画を観たことがない世代にも魅力が伝わることは間違いない。上映時間が100分間と短めで展開に無駄がなく、お子さんでも飽きずに観られることも嬉しい。
一方で、予告編でもわかるように「人間が恐竜に食べられる」様ははっきりと映るし、絶体絶命のシチュエーションそれぞれが“ガチ”で、スティーヴン・スピルバーグ監督作に通ずる「トラウマになりそうな光景」も存分に映る。
さらに、ネタバレになるので詳細は避けておくが、「普通のファミリー向け映画だったらここまでやらないよね!?」となるショッキングな展開が待ち受けていたりもする。その“アフターケア”とも言える描写があるとはいえ、未就学児ごろのお子さんにはさすがに怖すぎるかもしれないので、小学校高学年以上が推奨だと告げていこう。
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その上で、本作は原作のないオリジナル作品であり、予想のつかない「こうなるとは思わなかった!」な展開もキモだ。そのため、ぜひネタバレを踏まないまま早めに劇場へ駆けつけてほしい。以下からは、作品の中身に触れつつ注意点や魅力を紹介しよう。
※以下、『オークストリートの異変』の決定的なネタバレは避けつつ、一部の展開に触れています。
恐竜の交尾のシーンで気まずくなってしまうかも?

怖いシーン以外での注意点としては、「恐竜の交尾」が映ることだろうか。とはいえ、露悪的すぎない、なんなら後ろからハグしているくらいに見えるバランスで、個人的には子どもが観てもまったく問題ないと思える程度ではあった。だが、他にも生々しい夫婦喧嘩のシーンもあり、家族で観ると「ちょっと気まずくなる」描写にまで踏み込んでいるのは事実だろう。
なお、劇中では恐竜だけでなく、犬(超重要!)と猫も登場するが、どちらも劇中では最終的には無事なので、「犬や猫が死ぬ映画は許せない」という方も安心してほしい。
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ともかく、この『オークストリートの異変』は「ファミリー向け映画および全年齢指定ギリギリの(少し逸脱した?)刺激的な描写と展開」があり、それこそが大きな魅力になっていると認識しておくといい。その上で、やはり「家族が恐竜から逃げ惑う」シンプルな面白さこそを期待してほしいのだ。
アン・ハサウェイも惚れ込んだ『イット・フォローズ』。その監督は「ずっと恐竜映画を作りたい」と思っていた

本作で重要なのは、2016年の映画『イット・フォローズ』でブレイクしたデヴィッド・ロバート・ミッチェルが監督および脚本を担当したことだろう。
大人向けのホラー映画を手がけた監督が、ファミリー向けの恐竜映画でメガホンを取るのは意外にも思えるが、実際はミッチェル監督自身が「子どもの頃からずっと恐竜映画を作りたい」と思っていたそうだ。そのことがわかるミッチェル監督自身の言葉を、プレス資料から引用しておこう。
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引用----
私の父は恐竜に夢中で、古生物学者になることを夢見て、いつも恐竜の本を読んでいたんです。そういう環境で育ったんですね。子どもの頃は家族でレイ・ハリーハウゼン(※)の映画もよく観ていました。カウボーイがアロサウルスを発見する『恐竜グワンジ』のような、ストップモーション・アニメーションを使った作品です。そういうわけでずっと憧れていたんですが、自分ならではの恐竜映画がどういうものかが、わからなかったんです。でも数年前、近所をのんびり散歩していた時に、目を引く家と路地の前を通りかかったんです。その時にふと、そこに恐竜がいてゴミをあさっている姿が頭に浮かびました。私は立ち止まって、中流家庭の家が並ぶありふれた空間に、恐竜という幻想的な存在が入り込んでいる場面について想像しました。そして、「こういう雰囲気のストーリーを書いてみたい」「この頭の中に浮かんだイメージのような映画を作ってみたい」と思ったんです。
(※レイ・ハリーハウゼン:20世紀の映画における特撮技術の歴史を作ったといわれる特撮映画監督、特殊効果スタッフ)
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つまり、ミッチェル監督は子どもの頃からの恐竜映画への憧れと、散歩をしていた時のアイデアを組み合わせて企画に着手したのだ。
また、ミッチェル監督はデビュー作の『アメリカン・スリープオーバー』からデトロイト郊外の若者たちの青春を描きつつも、レイ・ハリーハウゼン作品および日本の怪獣映画「モスラ」シリーズのオマージュと思われる怪獣映画を劇中に登場させていた。ミッチェル監督らしい「郊外の日常を描く」作家性と「恐竜(怪獣)映画への憧れ」の両方を、今回の『オークストリートの異変』で遠慮なく盛り込んだと言えるだろう。
ちなみに、本作で主演の1人であるアン・ハサウェイは『イット・フォローズ』を観て作品に惚れ込み、その直後にミッチェル監督へランチでの面会を申し入れたそうだ。その時にすでにミッチェル監督は温めていた将来の企画について話していたが、脚本が完成するまでには8年近い歳月を要したという。つまり、『オークストリートの異変』は「監督の長年の夢がやっと叶った」作品でもあるのだ。
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題材と監督の作家性の最高の化学反応がある

その上で、結果的に『オークストリートの異変』は、「題材と監督の作家性が最高の化学反応を起こした」と言っていい。
例えば、『イット・フォローズ』では若者たちが正体不明の“それ”から逃れようと奮闘する様は娯楽性が抜群で、しかも“それ”には「人間に変身する」「歩く速度は遅い」「物理攻撃が効く」という“明確なルール”が示されていたからこそ、ロジカルな攻防戦が楽しめる内容だった。
そちらと同じく、今回の『オークストリートの異変』では序盤は家族4人それぞれが恐竜たちに翻弄されるばかりだが、徐々に慣れてきて「逃げるだけでなく立ち向かうようになっていく」様が面白く、恐竜以外でも劇中の“異変”のルールが明確になっていく印象もある。さらに、カメラワークが大胆に回り込んでいたり、はたまた定点で捉えてこそ「後ろ後ろ!」と観客側が言いたくなるハラハラを提供したりする様も『イット・フォローズ』と一致するばかりか、より娯楽性の純度が高まっていたのだ。
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また、「問題を抱えた倦怠期気味の夫婦」と「思春期特有の悩みが垣間見える息子と娘」の関係のほか、「お互いに隠している秘密」もつぶさに示されている。さらに恐竜の登場という異常事態のためにギクシャクしていた家族が、どのように結託していくか」は大きな見どころになっており、それらの“不穏さ”を根底とした心理描写の巧みさにも、ミッチェル監督の作家性が存分に表れていたのだ。
さらに、詳細はここでは伏せておくが、「いかにも80年代の映画らしい」展開が後半に用意されている。これは、「あの頃の娯楽映画」が好きな大人は感涙ものであるし、今の子どもには新鮮に映るのではないだろうか。ここは明確に「ジュラシック・パーク」シリーズとは一線を画すようであるし、最大の見どころと言っていい。
あえて賛否を呼びそうなポイントを挙げるのであれば、家族4人の中に誰も恐竜に詳しい者がおらず、必然的に恐竜それぞれの特性を生かした攻防戦がごく限られてしまっていることだろうか。だが、それも「恐怖の対象を知らない」からこそのサスペンスに繋がっているので一概には欠点ではない。それよりも、「厳密な時代考証にこだわらず、いろいろな時代の恐竜を混在させる」という「恐竜大集結」的なゴージャスさを歓迎する人も多いはずだ。
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『プリミティブ・ウォー 恐竜戦争』も要チェック!

最後に、本作の1週間前、8月7日より劇場公開中の『プリミティブ・ウォー 恐竜戦争』もぜひおすすめしておきたい。こちらは「ベトナム戦争下のジャングルに突如として恐竜が出現する」というサバイバルアクションだ。
惜しみなく見せ場を盛り込み、死者の数も尋常ではない様は『ザ・グリード』や『スターシップ・トゥルーパーズ』など「午後のロードショー」で観たくなるタイプの90年代の映画を思い出す。
さらに「恐竜による殺傷流血・肉体損壊および銃器による殺傷流血の描写がみられる」という理由でPG12指定がされているのだが、元々の“中学2年生”的な無邪気なアイデアに加えて、後半は血の気も含むサービスが“特盛”状態になっているので、ぜひともリアル中学生(と中学2年生の心を持つ大人)に観てほしい内容だった。
個人的には「観客が思っているツッコミを登場人物が代弁してくれる」ことが大いに笑えたし、その理不尽な状況に文句を言っていたからこそ、後半の展開がとてもアツいものになっていたのも嬉しい。ともかく、『オークストリートの異変』と『プリミティブ・ウォー』というタイプが異なる恐竜映画を見逃さないでほしい。
文=ヒナタカ
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