ノーベル文学賞は、アルフレッド・ノーベルの遺言に基づき1901年に創設された、文学の分野で「理想主義的な傾向における最も顕著な作品」を発表した人物に贈られる文学賞だ。
国籍やジャンルを問わず、これまで120人を超える作家たちに授与されてきた本賞の歴代受賞者には、川端康成や大江健三郎ら日本人作家をはじめ、世界的に有名な作家らが名を連ねる。本記事では、最新の受賞者からさかのぼり、歴代ノーベル文学賞受賞者を一挙紹介する。
【文学賞 受賞作品】一覧
2026年 アン・カーソン(カナダ)
■代表作
赤の自伝
怪物と英雄が恋をした。言葉が存在を解放する。
ノーベル文学賞最有力とも言われるアン・カーソンの代表作。
古代ギリシアの詩人ステシコロスが描いた怪物ゲリュオンと英雄ヘラクレスの神話が、ロマンスとなって現代に甦る。詩と小説のハイブリッド形式〈ヴァース・ノベル〉で再創造された、アン・カーソンの代表作ついに邦訳。
かみあわないノーマ
"詩をつくる"ことの極致
切り展く25篇 荘厳なのにユーモラス。古典的なのに驚くほど新しい。 世界文学に比類ない軌跡を刻むアン・カーソン。 詩の可能性を押し広げる英語圏最高峰による最新詩集。
2024年度 全米批評家協会賞受賞、NYタイムズ・ベスト・ポエトリー・ブック選出 本書に収録されている25篇の作品は、ジョセフ・コンラッド、グアンタナモ、フローベール、雪、貧困、ロジェ類語辞典、土曜の夜といった実に様々なものがテーマ。狐やジョン・ケージなども登場する。散文詩、定型詩、会話詩、レクチャーパフォーマンスのテクストなどの形式で、自由自在に描かれている。また本書は、著者自身が手掛けたドローイングやイメージの断片も収録。ノーベル文学賞受賞が期待される詩人による現代世界文学注目の一冊。
2025年 クラスナホルカイ・ラースロー(ハンガリー)
引用----
『終末論的な恐怖の渦中にあって、芸術の力を再確認させる、彼の説得力と洞察力のある作品に対して』
----
■代表作
北は山、南は湖、西は道、東は川
突然、父親を奪われた少女に救いは訪れるのか? 事件の謎は戦前から令和まで引き継がれ、慟哭の結末は我々に生きる意味さえ問いかける、前代未聞かつ究極の「冤罪」ミステリー。世代を超えて社会の歪みと戦い続ける者たちの行き着く先とはいったい何なのか。
The Melancholy of Resistance
【編集部訳】
真冬のさなか、「世界最大のクジラの剥製」を展示するというサーカス団が町にやってきた。
サーカスには何か不穏な企みがあるという噂が広まり、恐怖に駆られた市民たちは、音楽、宇宙論、そしてファシズムなど、自分たちの心の拠り所となるあらゆる「秩序」の形にしがみつこうとするーー。
The Melancholy of Resistance, László Krasznahorkai's magisterial, surreal novel, depicts a chain of mysterious events in a small Hungarian town. A circus, promising to display the stuffed body of the largest whale in the world, arrives in the dead of winter, prompting bizarre rumours. Word spreads that the circus folk have a sinister purpose in mind, and the frightened citizens cling to any manifestation of order they can find - music, cosmology, fascism.
Satantango
【編集部訳】数日間にわたって降り続く、終わりのない雨。 主人公は、名もない孤立した集落に暮らす12人の住人。陰謀、犯罪、不倫、脱出への希望…「信頼と、容赦ない裏切り」の物語が幕を開ける。
ノーベル文学賞受賞者の伝説の処女作。
The story of Satantango, spread over a couple of days of endless rain, focuses on the dozen remaining inhabitants of an unnamed isolated hamlet: failures stuck in the middle of nowhere. Schemes, crimes, infidelities, hopes of escape, and above all trust and its constant betrayal are Krasznahorkai’s meat. “At the center of Satantango,” George Szirtes has said, “is the eponymous drunken dance, referred to here sometimes as a tango and sometimes as a csardas. It takes place at the local inn where everyone is drunk. . . . Their world is rough and ready, lost somewhere between the comic and tragic, in one small insignificant corner of the cosmos. Theirs is the dance of death.”
2024年 韓江(ハン・ガン)(韓国)
引用----
『歴史的なトラウマと対峙し、人間の生命の儚さを露呈させた、迫力ある詩的な散文に対して』
----
■代表作
すべての、白いものたちの
生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。
菜食主義者
ごく平凡な女だったはずの妻・ヨンヘが、ある日突然、肉食を拒否し、日に日にやせ細っていく姿を見つめる夫(「菜食主義者」)、妻の妹・ヨンヘを芸術的・性的対象として狂おしいほど求め、あるイメージの虜となってゆく姉の夫(「蒙古斑」)、変わり果てた妹、家を去った夫、幼い息子……脆くも崩れ始めた日常の中で、もがきながら進もうとする姉・インへ(「木の花火」)―
3人の目を通して語られる連作小説集。
少年が来る
光州事件から約三十五年。あのとき、生を閉じた者の身に何が起きたのか。生き残った者は、あれからどうやって生きてきたのか。未来を奪われた者は何を思い、子どもを失った母親はどんな生を余儀なくされたのか。三十年以上の月日を経て、初めて見えてくるものがある――。丹念な取材のもと、死者と生き残った者の声にならない声を丁寧に掬いとった衝撃作。『菜食主義者』でマン・ブッカー賞国際賞に輝いた、著者渾身の物語。
2023年 ヨン・フォッセ(ノルウェー)
引用----
『言葉では言い尽くせないものに声を与えるような、革新的な演劇と散文に対して』
----
■代表作
朝と夕
〈第一部 誕生〉ノルウェー、フィヨルドの辺の家。息子の誕生を待つオーライ。生まれた子はオーライの父親と同じヨハネスと名付けられ、やがて漁師となる。
〈第二部 死〉コーヒーを沸かしパンに山羊のチーズをのせる……老いたヨハネスの、すべてが同じでまったく異なる一日がはじまる……フィヨルドの風景に誕生の日と死の一日を描き出した、神秘的で神話的な幻想譚。夢を見るような味わいの傑作。
だれか、来る
シンプルな言葉を繰り返す詩のような台詞で人間の本質を問う「だれか、来る」は、だれもが自分と重ね合わせられる。90年代に発表されるや、世界に衝撃を齎した。リアリズムと不条理演劇の間を往来する作風は、フォッセが、同じくノルウェー出身の劇作家イプセンの再来、〈21世紀のベケット〉などと称されるゆえんでもある。
ベルリン在住の訳者は、著者と20年以上親交を重ねてきた最良の理解者。フォッセは西海岸の周縁に生きる市井の人々の姿を描くために、西海岸の書き言葉ニーノシュクで執筆する。翻訳はドイツ語版から行ない、訳者が著者に直接確認しながら完成させた。エッセイ「魚の大きな目」は、フィヨルドとともにある生活の風景やフォッセの文学観がよくわかる。
三部作【トリロギーエン】
アスレは不毛な海岸地帯の街をさまよっていた。妊娠中のアリーダを連れ、住居と仕事を探していたのだ。だが、お互いだけが家族の17歳を助けてくれる者はいない。決死の思いの選択は、やがて家族の生に影を落とす。ノルウェーのノーベル賞作家による連作短篇集。
2022年 アニー・エルノー(フランス)
引用----
『個人的な記憶の根源と疎外、および集団的抑圧を暴いた勇気と分析的鋭敏さに対して』
----
■代表作
シンプルな情熱
「昨年の九月以降わたしは、ある男性を待つこと──彼が電話をかけてくるのを、
そして家へ訪ねてくるのを待つこと以外何ひとつしなくなった」
離婚後独身でパリに暮らす女性教師が、妻子ある若い東欧の外交官と不倫の関係に。
彼だけのことを思い、逢えばどこでも熱く抱擁する。
その情熱はロマンチシズムからはほど遠い、激しく単純で肉体的なものだった。
自分自身の体験を赤裸々に語り、大反響を呼んだ、衝撃の問題作。
嫉妬/事件
別れた男が他の女と暮らすと知り、私はそのことしか考えられなくなる。どこに住むどんな女なのか、あらゆる手段を使って狂ったように特定しようとしたが──。妄執に取り憑かれた自己を冷徹に描く「嫉妬」。1963年、中絶が違法だった時代のフランスで、妊娠してしまったものの、赤ん坊を堕ろして学業を続けたい大学生の苦悩と葛藤、闇で行われていた危険な堕胎の実態を克明に描き、オードレイ・ディヴァン監督により映画化され、ヴェネチア国際映画祭でも金獅子賞を受賞した「あのこと」の原作の「事件」の傑作二篇を収録。
ある女
母が死んだ。
十二歳で学校を辞めて工場で働き、父と結婚した後は、共に店を切り盛りしていた母の人生。自分の子供に少しでも良い教育をと子どもの数は一人にし、教育にお金をかけてくれた母。そんな母の誇りは、一人娘が教員免許をとり、知識階級の仲間入りを果たしたことだった。やがて忍び寄る病魔の影。母はアルツハイマー病になっていた。母を引き取り介護に明け暮れるが、自分一人では母の面倒を見切れず、養老院に預けることに――。
フランス人女性として初めてノーベル文学賞を受賞した著者が、自らの母親の人生と、母が娘に託したものを綴る、自伝的小説。
2021年 アブドゥルラザク・グルナ(イギリス)
引用----
『植民地主義のもたらした影響と、異なる文化と大陸の狭間に置かれた難民が辿った運命への、妥協のない、情熱の込もった洞察に対して』
----
■代表作
楽園
舞台は20世紀初頭、現在のタンザニアの架空の町。主人公ユスフの12歳から18歳までの成長の過程が辿られ、東アフリカ沿岸地域の歴史的な大転換期が、少年の目から語られる。
宿を経営するユスフの父親は借金に行き詰まり、裕福な商人アズィズに借金の形に息子を差し出す。ユスフは使用人(奴隷)として働き、内陸への隊商で莫大な富を得ているアズィズの旅に加わる。
互いに争うアラブ人、インド人、アフリカ人、ヨーロッパ人のいくつもの勢力を目撃し、さまざまな経験を積んだユスフは次第に自らの隷属状態について疑問を抱きはじめる……。
Theft
【編集部訳】1990年代のザンジバルを舞台に、異なる境遇に生まれた三人の若者の友情と愛、裏切りを描いた物語。ポストコロニアルの東アフリカを背景に、それぞれが夢と現実の狭間で懸命に生きようとする姿が、繊細かつ鮮やかに綴られる。
It is the 1990s. Growing up in Zanzibar, three very different young people – Karim, Fauzia and Badar – are coming of age, and dreaming of great possibilities in their young nation. But for Badar, an uneducated servant boy who has never known his parents, it seems as if all doors are closed.
Brought into a lowly position in a great house in Dar es Salaam, Badar finds the first true home of his life – and the friendship of Karim, the young man of the house. Even when a shattering false accusation sees Badar sent away, Karim and Fauzia refuse to turn away from their friend.
But as the three of them take their first steps in love, infatuation, work and parenthood, their bond is tested – and Karim is tempted into a betrayal that will change all of their lives forever.
Afterlives
【編集部訳】ドイツ植民地軍に少年時代を奪われ、長い戦争を経て故郷へと帰還したイリヤス。同じ頃、戦場に売られた青年ハマザもまた、何もかも失ったまま新たな生を求めて彷徨っていた。東アフリカの植民地支配という歴史の影の中で、二人の若者とイリヤスの妹アフィヤの運命が交わり、絡み合う。愛と喪失、そして戦争の予兆…