
『余命300日の毒親』(枇杷かな子:漫画、太田差惠子:監修/KADOKAWA)は、ずっと家族に暴力を振るってきた父親が余命宣告を受けたことから始まる介護の日々を描いたセミフィクションである。「毒親でも介護しなければならないのか」という問いに真正面から向き合った作品だ。
主人公のヒトミは、幼少期から父親の暴力に苦しみながら育った。母親が亡くなって2年後、その父親が、がんで余命1年と宣告される。父親に対する愛情はなく、できることなら介護には関わりたくないと思うヒトミだったが、要介護認定は思うように進まず、頼れる親族もいなかった。結局、仕事と家事、育児を抱えながら、横暴な彼の介護を担うことになってしまう。
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胸に迫るのは「介護は美談では終わらない」という現実だ。虐待を受けた記憶は大人になっても消えるはずはなく、親なんだから世話をするのは当然という言葉だけでは片付けられない事情がある。父親への怒り、「見捨ててもいいのではないか」という思い、そしてそう思ってしまうことへの罪悪感。そのどれもが嘘ではなく、読み進めるほどヒトミの葛藤が切実に伝わってくる。
本作は介護そのものの過酷さも同時に描いている。仕事と家事、育児をこなしながら介護を続ける生活は、心身を少しずつだが確実に追い詰めていく。夫や娘との関係にも影響し、やがてヒトミには介護うつの症状が現れ、自身の生活を維持することさえ難しくなっていくのである。介護をする側には限界があり、支援は絶対に必要であることを改めて伝えてくる。
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それでも残された時間のなかで、ヒトミは父親と、そして自分自身と向き合うことになる。「介護とは誰のためにあるのか」「自分の人生を守ることは悪いことなのか」ということを問いかけてくるヒトミの率直な思いと言葉は、今実際に介護をしている人の救いになるかもしれない。そして、誰もが直面する可能性のある介護のことを知るために、多くの人に読んでほしい作品である。
文=益田聖良
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