
『お母さんのおむつを替えた日 ヤングケアラーの見つけ方』(一ノ瀬かおる:著、福田旭:協力/竹書房)は、幼い頃から母親を支え続け、10代で本格的な介護を担うことになった一人の少年の実体験をもとに描いたコミックエッセイである。子どもが家族の世話をすることは「偉いこと」と受け止められがちだ。しかし、その陰で子どもとしての時間が失われていくヤングケアラーの現実を伝えてくる。
主人公は、3歳で父を亡くした少年・旭。母親とふたりで暮らし、お好み焼き屋を切り盛りする家庭を支えながら育つ。母親は神仏やご先祖様の声が聞こえる人物で、スピリチュアルカウンセラーのように近所の人たちの相談にも乗っていたが、生活は苦しかった。林間学校などの学校行事よりも家が優先され、母親は依頼がくれば店を休み、自腹を切って相談者のもとへ行ってしまう。「自分がこの家を守らなければならない」。そんな思いを抱えていた矢先、母親が倒れ、17歳から本格的な介護生活が始まる。
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まだ「ヤングケアラー」という言葉がない時代。母親を支えることは家族だから当然であり、自分がやるしかない。そう思い続けてきたために、助けを求めるという発想が生まれない。周囲の大人たちもその状況に気づくことなく時間だけが過ぎていく。孤立とは、誰にも助けてもらえないことだけではなく、自分が助けを必要としていることさえ認識できない状態でもあると思わせられる。
タイトルの「お母さんのおむつを替えた日」は、介護というものを象徴する出来事であると同時に、主人公が子どもでいられなくなったことを表している。そして母親の死後、大人になった旭は、自らの経験を社会へ伝え「ヤングケアラーを見つけること」の大切さを訴えていく道に進んでいく。
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最近になってようやくヤングケアラーの問題は広く知られるようになった。とはいえやはり家庭内のことは外から見えにくく、本人も「これが普通」と捉えている状況はまだまだ多いはずだ。本作が、当事者はもちろん、その周りにいる大人たちも状況の改善のために動くきっかけになることを願う。
文=レム・イケダ
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