
ネコにシャンプーするのはありがた迷惑? ウサギにニンジンをあげすぎると病気の原因に!?『いきものたちの言い分 その愛、正直メーワクです。』(田向健一:監修、こざき ゆう:著/KADOKAWA)は、そんなペットに関する思い込みや勘違いを動物視点で教えてくれる一冊。ユーモラスなイラストが添えられ、気軽に読めるので、小学生の読書感想文にもぴったりだ。
このたび、本書を監修した田園調布動物病院 獣医師の田向健一氏と爬虫類YouTuber・ふじぴこ氏の対談が実現! 動物と人間のすれ違い、ペットを飼う時の心構えについて、ふたりに語り合っていただいた。本記事ではインタビューの前編をご紹介。
緑色で木に登る生物は気難しい?
――田向先生は、『いきものたちの言い分 その愛、正直メーワクです。』で監修を務めています。この本の企画は、どのようにしてスタートしたのでしょうか。
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田向健一氏(以下、田向):編集者が動物の飼い方に関する私の話を面白がってくれて、本にしたいと相談されました。ただ、僕が「こういう飼い方はよくない」と一刀両断すると、怖くて冷たい獣医師だと思われてしまいます(笑)。そこで1年以上、表現の仕方を練っていたところ、編集者から「動物に喋らせれば冷たく聞こえないんじゃないか」と提案されました。そこで立ち上がったのが、この本の企画です。子どもに向けて動物のことを面白おかしく伝えながら、動物との接し方について啓蒙できたらと思いました。
ふじぴこ氏(以下、ふじぴこ):僕も読ませていただいたんですが、おっしゃる通り、生き物が喋るのが面白いですね。動物によって語り口も違いますし、イラストも入っているので小さいお子さんでも読めそうです。
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田向:ありがとうございます。大人が読んでも、「へぇ」と思えるネタをいろいろ入れました。
ふじぴこ:僕はフクロモモンガの言い分が好きでしたね。オスは頭がハゲちゃうんですけど、「ストレスかい? 病気かい?」と心配する飼い主もハゲている。それに対して、フクロモモンガが「おめーもな!」ってツッコミを入れてるのが面白くて。挿絵も含めて笑えるんです。

――そもそも田向先生は、子どもの頃から動物がお好きでいろいろ飼っていたそうですね。獣医を目指したきっかけは?
田向:物心ついた頃から、ずっと動物を飼い続けてきました。好きなものがそのまま仕事につながったという意味では、幸せだなと思います。
獣医師を目指したきっかけは、中学時代にグリーンイグアナを飼ったことでした。当時、僕が育った愛知県には爬虫類を売っているお店が一軒もなかったので、通信販売で買って。
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ふじぴこ:今は対面販売ですけど、昔は通販で買えたんですよね。
田向:そうなんです。それでイグアナを飼い始めて、みるみる大きくなって。いろいろ調べているうちにイグアナも病気になると知り、それが新鮮に感じられたんです。そこで進路を考えた時に、何か動物に関わる仕事をしたいなと。イグアナも治せる獣医になったら楽しいかなと思い、この仕事を目指しました。
――獣医になるための大学では、イグアナのようなエキゾチックアニマルの治療についても勉強するのでしょうか。
田向:しないですね。そもそも獣医師になるには、農林水産省が行う国家試験に合格しなければならないんです。なぜ農林水産省かと言えば、獣医の主な仕事は食肉や牛乳などを生み出す家畜の健康を支えることだから。今でこそ犬や猫の勉強もしますが、爬虫類や両生類、ウサギなどの病気については、ほぼ勉強しません。
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とはいえ、脊椎動物の場合、生理学や解剖学の基礎は同じです。そこから類推したり、海外から資料を取り寄せて勉強したりしながら治療を行っています。
――ふじぴこさんはYouTubeで爬虫類との暮らしを配信していますが、そもそも爬虫類に興味を持ったきっかけは?
ふじぴこ:僕は神戸の近くの自然豊かな場所で育ったので、子どもの頃から家の周りでセミやミズカマキリ、カナヘビを捕まえて世話していました。その後、大人になって上京したら、近所に爬虫類の大型ショップを見かけたんですね。小学校の頃、友達がジャクソンカメレオンを飼っていたんですけど、当時はカメレオンの飼育方法が確立されていなくて。生け花のように、枯れていくのを楽しむようなものだったんです。
でも、そのショップで話を聞いたら、「今は器具も発展したし、エサも手軽に手に入るのでそこまで難しくないですよ」と言われて。じゃあ飼ってみようと思い、エボシカメレオンを飼い始めたのが第一歩でした。
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――現在は、どんな爬虫類を何体飼っているんですか?
ふじぴこ:ちゃんと数えたことがないんですけど、70~80匹はいると思いますね。繁殖させてカメレオンの赤ちゃんも生まれました。
田向:繁殖は、爬虫類飼いのひとつの夢でありステータスですよね。正しく飼えているという証なので。特にカメレオンは難しいんです。僕はよく言うんですけど、緑色で木に登る生物はだいたい気難しい。
ふじぴこ:確かに!
田向:地べたを走っている茶色い動物はどこでも生活できるけど、木の上に棲息する緑の生物はニッチな環境でしか生きられないんだと解釈してます。
ふじぴこ:カメレオンも、ストレスにすごく弱いとされていますよね。人間の視線を感じるだけで、「なんか見てんな、こいつ」と思ってエサを食べなくなっちゃう。
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――この本にも、動いていない水は飲んでくれないという知識が語られていましたね。
ふじぴこ:それも、カメレオンの飼育難易度を上げている要因のひとつです。止まっている水は認識しないので、水滴を垂らしたり、ブクブクさせたりしないと飲んでくれないんです。

カメレオンの診察は、ガッと診てサッと戻すのが正解
――ふじぴこさんは、田向先生の病院にいらしたことがあるそうですね。
ふじぴこ:そうなんですよ。実はYouTubeをやり始める前、初めてエボシカメレオンを飼育した時に田向院長に診ていただきました。カメレオンが目を開けなくなったので、最初は近所の病院に連れていったんです。その先生は丁寧な方で、「かわいそうにねぇ」と言いながらいろいろ診てくれて。ただ、カメレオンの扱いに慣れていないのか、ちょっと落としたりもして(笑)。薬も処方してもらいましたが、全然治らなかったんです。
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そこでセカンドオピニオンを受けようといろいろ調べたところ、田向院長の存在を知りました。
田向:冷たくしませんでした?(笑)
ふじぴこ:僕が病状を説明したら、「ちょっと診せて」って言いながら、ガッと掴んで目に水をジャーッとかけて「はい、大丈夫です」(笑)。その時は「えー!?」と思いましたけど、その後すぐに目が開いて治ったんです。
後日先生の本を読んだところ、「いかに動物にストレスを与えず、シンプルかつ端的に診察するかが大事」と書かれていて納得しました。
田向:まさしく「いきものたちの言い分」ですね。ガッと診てサッと戻したほうが、動物にとってはストレスが少ないですから。特にカメレオンは神経質で気難しいので、そもそも家から病院に移動する時点ですねています。診察でいつまでも触っていたら、もうすねまくりです。だから、サッと診るのが一番いい。飼い主さんにとっては、印象が悪いかもしれないですが(笑)。
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ふじぴこ:いえいえ(笑)。その後も、4年ほど前にパンサーカメレオンの皮膚病を診ていただきました。白ニキビのようなブツブツができたんですけど、「これはパンサーしかならない病気で、そっとしておくしかない」と言われて。
田向:それ、2年くらい前に論文が発表され、原因がわかりました。飼育下の紫外線が強すぎて、皮膚がんになっていたんです。
ふじぴこ:え、そうなんですか!? てっきり紫外線が弱いのかと思っていました。もともとその子は、ブリーダーさんが屋外で飼育していたんです。詳しい方に聞いたら、「室内のケージで育てると、太陽光で抗菌されないから雑菌が溜まったのでは?」と言われて。
田向:いや、屋外で棲息しているからと言って、必ずしも日なたにいるわけではないですよね。むしろ木陰にいることのほうが多い。逃げ場のないケージで、がんがん紫外線ライトを当てられるから皮膚がんが発生したんでしょうね。
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ふじぴこ:なるほど、目からウロコです! 確かに、紫外線ライトにこだわって、照度も高く設定していました。まさに『いきものたちの言い分』で書かれていたように、よかれと思ってしたことが間違っていたわけですね。その子には申し訳ないことをしたけど、これで救われる命が増えそうですね。
田向:かかってしまった皮膚がんの特効薬はありませんが、紫外線の当てすぎを防ぐことはできますよね。このように、獣医療も日進月歩で成長しているんです。
後編に続く
取材・文=野本由起
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