
『配信者・ハケンOLと手芸屋メロ』(らくだ/KADOKAWA)は、ゲーム配信者として人気を集めるOLと、彼女がひそかに推している手芸系配信者の男性が、職場で出会ったことから始まるラブコメディ。配信者と視聴者、先輩と後輩、そしてふたりはお互いの「推し」という、いくつもの関係が重なり合う、推し活時代ならではの恋模様を描いた作品だ。
主人公の山本すみれは、とある制作会社で働く一見は普通のOL。しかし夜になると人気ゲーム配信者「ハケンOL」という、もうひとつの顔を持っている。そんな彼女が日々の癒やしにしているのが、手芸系配信者「手芸屋メロ」の動画だ。ただし、すみれの推し活には絶対に譲れない信念がある。それは「推しに認知されるなんてもってのほか!」というもの。コメントなどで積極的に交流するのではなく、ひっそりと推しを眺めていたいのだ。
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ところがある日、職場に谷一という寡黙な男性が入社してくる。一緒に働き、少しずつ彼のことを知っていくうちに、すみれはとんでもない事実に気づいてしまう。谷こそ、自分がずっと推してきた「手芸屋メロ」なのではないか……。画面の向こうにいるから安心して推せた存在が、突然すぐそばに現れてしまったのだ。
さらに面白いのは、すみれ自身もまた人気配信者であり、実は谷にとって彼女も「推し」だということ。物語が進むにつれ、ふたりは互いの正体を知り、「同盟」を結び、配信活動や仕事を支え合う関係になっていく。推しだからこそ相手を尊敬し、その活動を大切にしたい。そんな思いを抱きながら支え合っていくうちに、ふたりの距離が少しずつ縮まっていく。
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そして完結巻となる第3巻では、その関係が大きく動き出す。助け合いながら絆を深めてきたすみれに、谷がついに「好きです」と告白するのだ。「推し」と「好きな人」は同じ存在になれるのか。互いが互いの推しという、なんとも贅沢でややこしい恋の行方は。
推し活あるあるを盛り込みながら、誰かを好きになることの楽しさと尊さを描いた本作。推しがいる人なら、すみれと谷の一喜一憂に共感しながら楽しめる、現代ならではのラブストーリーである。
文=富野安彦
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