
本当に私達は、「正常」と「異常」を「正しく」「認識」できているのだろうか?
『対怪異アンドロイド開発研究室2.0』(饗庭淵/KADOKAWA)は、読者を未知への恐怖に強制没入させる新感覚ホラー小説である。
若き天才・白川有栖(ありす)教授によって造られた「アリサ」は、超高性能(めちゃくちゃすごい)美麗アンドロイドだ。彼女にはおばけが見える。つまり「呪いも祟りも効かず、怪異を客観的に検出できるAIロボット」なのだ。
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彼女を開発した白川教授の目的は、12年前に行方不明になった妹・有紗(ありさ)を探し出すこと。有紗は霊能力者であり、何かの怪事件に巻き込まれて失踪している。
そのためアンドロイドのアリサは、白川教授の命令の下、心霊スポットや怪事件が起こった場所に赴きデータを集め、妹の行方を追う手掛かりを探していた。
前作では、白川姉妹の故郷「月見村」で、「ある存在」を鎮めるため、我が身を犠牲にしようとしていた有紗を発見・計画の阻止に成功する。しかしアリサの奮闘虚しく、彼女を完全に救い出すことまではできず、有紗は未だ異界をさまよい続ける[1.1]ことになってしまう。
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そして第2巻となる本作、月見村での一件で大きく破損してしまったアリサは、少女型の試作ボディに人格と記憶をコピーし、アリサβとして登場。その姿を活かし、ある中学校の七不思議の調査をすることになった彼女は、転校生として潜入し、同じクラスの鮎川浩紀(あゆかわ・ひろき)が部長の「異常存在リサーチ部」に入部した。
1、深夜、覗くと飲み込まれる大鏡
2、女性のうめき声が聞こえる緑の家
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3、身捧げ
4、異界トンネル
5、全身赤タイツの男
6、トイレの神様
7、いないはずの生徒
これらの奇妙な噂を「実践」で調査を始めるのだが、ひとつひとつの真相が明らかになるにつれ、どこか違和感が生じ始める。一方で白川教授には、どうしても思い出せない記憶があった。それは異界トンネルの――。
一つの謎が明らかになれば、またさらなる謎が生じ、謎だとも思っていなかったことが謎になり、なんとも奇妙な後味を残して、さらなる謎の世界へ誘う。――何を言っているのか分からないかもしれないが、本作にはそんな不気味な吸引力がある。
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だが一方で、普通の人間なら失神するであろう心霊現象も、アリサにとってはただの「現象」に過ぎないからこそ、奇妙な「笑い」が生じるシーンも結構あったりする。(前作での、女性の幽霊と布団の上でにらめっこ状態5時間のシーンなど、絵として想像してみると、かなりシュールで笑えるはずだ)。
そして読者が、そういった本作の独特な世界観にもすっかり慣れ、これを「正常な現実」だと認識した瞬間、再び私たちは真っ暗な宇宙空間に投げ出されたような衝撃を受けるのではないだろうか。今まで「正常」だと思っていた現実が「狂っていた」と思わされる出来事が、物語の中盤、唐突に(実は伏線が巧みに張られているのだが)巻き起こるのだ。
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さて本作、個性豊かなキャラクターたちが登場し、美少女アンドロイドが怪異の調査をするというライトノベルのような感覚で読むこともできる。アニメ化、ゲーム化のオファーがあってもおかしくないくらい、エンタメ性も強いと思う。
しかし更に深いレイヤーには、幽霊や呪いなど比ではないほど、人間が根源的に忌避する「恐怖」を描いているようにも思う。それは自分の常識、当たり前のように信じていた現実が、こうもあやふやで脆いものなのかと、突きつけられる恐怖だ。
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どういう読み方をしても楽しめるのが本作の大いなる魅力であろう。これぞまさに新感覚のホラー小説。本作からでも楽しめるので、「新しい恐怖」に出会いたい方は、ぜひ。
文=雨野裾
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