いじめのニュースを目にするたび、心を痛めながらも、どこか「我が家には関係ない」と感じてはいないだろうか。だが、いじめは決して他人事ではない。我が子が被害者になるかもしれないし、あるいは加害者になる可能性もある。
本稿では、そんな「いじめ」にまつわる経験や葛藤を描いたマンガの中から、ダ・ヴィンチWebで反響の大きかった5作品をご紹介しよう。
▶娘がいじめをしていました
▶娘はいじめなんてやってない
▶家族全員でいじめと戦うということ。
▶あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで
続きを読む
▶ボッチだった6ヶ月間(とその後)
1)『娘がいじめをしていました』しろやぎ秋吾

■我が子が誰かを傷つけていた。そのとき、親は――

自分の子どもが、いじめの「加害者」だったら……。いじめ問題を加害者家族、被害者家族双方の視点で描いたのが、『娘がいじめをしていました』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)。ある日、母親の加奈子は小学5年生の娘・愛が同級生の小春をいじめていた事実を知る。過去にいじめに苦しんだ経験を持つ加奈子は、娘を許せない気持ちと、それでも親として支えなければならない葛藤を抱えてしまう。一方、小春の母・千春は、苦しむ娘のことを知り合いに相談。やがてSNS上での匿名の告発をきっかけに、事態は当事者たちの手を離れて動き始める。誰かを裁こうとする「正しさ」が制御を失っていく展開は、子育て中の人に限らず、すべての大人に通ずるものがあるはず。
続きを読む
2)『娘はいじめなんてやってない』しろやぎ秋吾

■否定し続ける娘の言葉を、親はどこまで信じきれるのだろうか

『娘はいじめなんてやってない』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)は、いじめの加害者だと名指しされた少女と、その母親の物語。発端は、小学6年生の児童が校舎の屋上から飛び降りたという事件だった。一命を取り留めたものの、少年は意識不明の状態。残されていた遺書には、いじめによる苦悩の日々とともに、主犯として「青空茜」を含む複数の児童の名前が記載されていた。母親の翼は茜を問い詰めるが、本人は頑として関与を認めない。さらに茜がかつてその飛び降りた少年からいじめを受けていた背景も加味して、翼は娘を信じることに決めたのだが、同時に疑念も拭えなかった。やがてネット上では憶測が広がり、茜は「犯人」として断定されてしまう。顔の見えない世論が、事実とは異なる「真実」を作り上げ、家族の心身を追い詰めていく様子は、現代社会に潜む危うさを浮き彫りにしている。SNS上での「私刑」が問題視される今だからこそ、多くの人に手にとってほしい作品だ。
続きを読む
3)『家族全員でいじめと戦うということ。』さやけん

■娘は4年間、ひとりで耐えていた。いじめに気づけなかった親の後悔と奮闘の記録

小学5年生のハルコが、学校でいじめを受けている――。2児の母・ナツミの体験を綴ったコミックエッセイ『家族全員でいじめと戦うということ。』(さやけん/KADOKAWA)は、いじめに立ち向かった家族の記録。ハルコはいつも何事もないかのように振る舞っていたのだが、実際には4年も前からクラスメートに無視され続けていた。なぜ娘の苦しみに気づけなかったのか。ナツミは自らを責めながら、改めていじめの有無を尋ねるも、娘は否定するばかり。しかしある時、ハルコは突然立てなくなり、笑顔も減り、食事も喉を通らなくなっていく。極限まで追い詰められた娘を前に、家族はどのような行動に出たのか。周囲の保護者たちの複雑な胸の内まで丁寧に描き出した、家族の記録をぜひ見届けてほしい。
続きを読む
4)『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』もつお

■過去の傷に縛られたまま大人になった主人公が、一歩を踏み出すまでを描いたコミックエッセイ

学生時代に負った心の傷は、大人になったからといって消えるわけではない。何年経っても本人を蝕み続ける痛みは、まさに「呪い」と言えるだろう。『あの頃世界のすべてだった学校と自分への呪いにさよならするまで』(もつお/KADOKAWA)は、そんな学生時代の呪いとそこからの解放を描いたセミフィクションだ。夢に見た女子校生活をスタートさせ、クラスの中心グループに加わることができた主人公のユイ。しかし仲間内で標的を替えながら誰かを仲間はずれにする空気が広がり、やがてその矛先はユイへと向けられた。当時の傷を抱えたまま社会人となったユイは、同窓会への参加をきっかけに「呪い」と向き合うことになる。自分を低く見積もり、我慢することが当たり前になっていた彼女が前へ進もうとする姿は、多くの人の背中を押してくれるはず。
続きを読む
5)『ボッチだった6ヶ月間 (とその後)』都会

■ささいなことをきっかけに、突然“独り”になった中3女子の記録

SNSでの発表時から多くの共感を集めたコミックエッセイ『ボッチだった6ヶ月間(とその後)』(都会/KADOKAWA)。主人公の都会は、中学2年生の春に仲良しグループの一員となり、この友情はずっと続くものだと信じていた。しかし中学3年生の秋、友達からの“イジり”に耐えかねて苦言を呈したことをきっかけに、翌日から無視されるようになってしまう。昨日まで当たり前のように話していた友達は、もう目も合わせてくれない。卒業まで残り半年。運動会や文化祭、修学旅行といった学校生活のビッグイベントを控える中、都会はあの手この手で乗り越えようとする。同作では突如として始まった中学校での「ボッチ生活」に加え、その後の高校生編も収録。デリケートなテーマを扱いながら、随所にギャグを織り交ぜることで重苦しさを和らげており、最後まで読みやすい一冊となっている。
一口に「いじめ」といっても、各作品で描かれる立場はさまざま。被害者となった子、加害者となった子、そしてその親たちなど、それぞれ異なる視点から「いじめ」という問題が描かれている。共通しているのは、“学校”という狭いコミュニティーが、子どもにとっては“すべて”のように思えてしまうという点だろう。だが、渦中にいるときには見えなくても、その外には確かに続いていく人生がある。そんな普遍的なメッセージを多様な形で伝えてくれるのが、いじめを題材にしたマンガの魅力なのかもしれない。
文=ハララ書房
記事一覧に戻る