
心が深く傷つくと、次の一歩を踏み出すまでには時間がかかる。『婚活とミシン もう一度恋がしたいけどめんどくさい気もする』(和田フミ江/秋田書店)は、42歳で婚活を始めた女性が、苦い記憶と向き合いながら前へ進む人生リメイクストーリーだ。
主人公・小針晶は、結婚式を挙げた恋人に婚約を反故にされた過去を抱えている。そのトラウマを断ち切ろうと婚活を始めたものの、まったく思うようにいかない現実に心を削られていた。そんなある日、マッチングアプリで知り合ったイケオジ・絲山と食事をすることになる。しかし、穏やかな笑顔で投資の話をし始める絲山を見て、晶は彼を詐欺師と疑い大激怒。婚活への不信感も重なり、その場をたち去ってしまう。
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ところが後日、破れたワンピースを直してもらおうと訪れたお直し屋で、店主として現れたのは絲山だった。自分の勘違いだったと知り、気まずさで逃げ出そうとする晶だが、絲山は責めることなく、ワンピースにピンを打ちながらさまざまな仕立て直しを提案していく。婚活のために買ったものの「自分らしくない」と感じていた服が、「しっくりくる一着」へと魔法のように生まれ変わっていく場面は、この作品を象徴するシーンだ。
晶は愛想がよいタイプではなく、思ったことをそのまま口にしてしまう不器用な女性だ。そんな彼女の裏表のなさを否定せず、自然体で受け止める絲山とのやり取りには心地よさがある。勢いだけで恋に飛び込めたころとは違い、傷つくことも、関係を築いていく手間も知っている。それでも、もう一度誰かを好きになりたいという気持ちは消えない。そんな40代だからこその気持ちの揺れ動きが丁寧に描かれている。
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絲山との出会いで、晶の日常に少しずつ変化が訪れていく。その一方で、元恋人のパートナーと思われる人物の不穏な気配も漂い、一筋縄ではいかない展開も見せていく。絲山との関係の行方はもちろん、晶の人生がどう変わっていくのか目が離せなくなる作品だ。
文=つぼ子
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