
『ゴールデンラズベリー』(持田あき/祥伝社)は、仕事が長続きしない男性と、恋が続かない女性が出会い、芸能界を舞台に新たな人生へ踏み出すサクセスラブストーリーだ。
主人公の北方啓介は、高学歴、高収入、高身長の32歳。しかしその実態は、転職を24回も繰り返してきた「仕事が続かない男」だった。ラストチャンスのつもりで飛び込んだ芸能プロダクションでも、完璧に準備した担当女優のデビューイベント当日にその女優に逃げられ、またも仕事で大失敗。もはや自分に合う職はないと自暴自棄になり街をふらついていると、ある女性に目が留まった。
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その女性は、取引先に激しく怒鳴られていたにもかかわらず、泣くどころか表情ひとつ変えずその場を去っていったのだ。その姿がなぜか啓介の脳裏に焼き付いてしまう。その後、啓介は偶然にも彼女が恋人と別れる場面に出くわす。そこでも彼女は表情を一切変えることなく自転車で去ろうとした。しかし自転車のチェーンが外れて動けなくなったため、啓介は思わず彼女に声を掛ける。彼女は吉川塁という名で、食品卸の中小企業に勤めているという。彼氏と別れたことと、そしていつも恋人と長続きしないこととを淡々と語る塁の瞳を見た啓介は、圧倒的な芯の強さと可能性を感じ、芸能界にスカウトするのだった。そして——。
妥協は必要と思いつつ、本当は「死ぬほどおもしろい仕事がしてみたい」と願う啓介と、一度でいいから誰かに本気で選ばれたいと思っている塁。互いの利害と情熱が一致したふたりは、芸能界デビューという目標に向けてタッグを組むことになる。そんなふたりの絶妙な距離とテンポの良い掛け合いも本作の魅力だ。
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プロモーション活動や撮影現場の様子など、芸能界の仕事の裏側の細かな描写も興味深く、そして熱量を持って前へ進んでいく啓介と塁の姿は読み手の心を否応なく熱くするだろう。果たしてふたりはどんな未来をつかみ取るのか。最後まで目が離せない。
文=ゆくり
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