
子どものための“伴走者”だったはずが、いつしか母自身が「合格」にとらわれていく……。
とーやあきこさんの『合格にとらわれた私 母親たちの中学受験』(KADOKAWA)は、中学受験を通した母親たちの葛藤を描いた物語。自分がかつて諦めた学校を娘・綾佳に挑戦させることにした真澄。しかし成績が伸び悩み、焦燥感を募らせる。そんな中、ママ友かなえの娘・まりんが下のクラスから綾佳のクラスに上がってくることに。まりんの飛躍を素直に喜べない真澄。それどころかさらに焦り、綾佳にきつく当たるようになってしまう……。一方、2家族と昔から仲が良く成績優秀な優也の母・潤子は、夫が自分の出身校以外を受験するなと息子にプレッシャーをかけることに疑問を感じる。とはいえ、潤子自身も学歴コンプレックスがあり、息子を守りきれないでいた。
数多くの取材を重ねて執筆したという本作。とーやさんに取材の中で見えた昨今の中学受験事情や、自身も経験したという子どもに辛い言葉をかけてしまうときの心境についてなど、話を伺った。
続きを読む
――取材された中で、親御さんが子どもの中学受験に踏み切る理由には、どのようなものがありましたか?
とーやあきこさん(以下、とーや):圧倒的に多かったのは、両親のどちらかが中学受験の経験者というケースでした。自分が経験して良かったからこそ、「子どもにも」という思いで受験を選ぶご家庭が多い印象でした。そのほかにも、住んでいる地域に受験する子が多かったり、仲の良い友達が受験するので一緒に挑戦することになったりと、さまざまな理由がありましたね。
意外だったのは、最終的な判断を子どもに委ねるご家庭も多かったことです。長期休暇中に学童ではなく塾へ通わせてみて、そのうえで「中学受験をするかどうか」を子ども自身に決めてもらう。そうした流れで受験に踏み切ったご家庭もたくさんありました。
続きを読む
――取材をする中で、親御さん自身に中学受験の経験があることによるメリットやデメリットは感じましたか?
とーや:子どもがどんなことで悩むのか、つまずいたときにどう乗り越えればいいのかを自分の経験をもとにアドバイスできるのは大きな強みですよね。ゴールまでの道のりを知っているからこそ、目先の成績だけではなく、長い目で子どもを見守る余裕があるのも、経験者ならではだなと感じました。
一方で経験者だからこそ厳しくなってしまう面もあると思います。自分と比べて成績が振るわなかったり、勉強への取り組みが甘く見えたりすると許せなくなってしまうんですよね。そこは、子どもによってはプレッシャーに感じてしまうこともあるのではないかと思いました。
続きを読む
――とーやさんご自身は中学受験を経験されていますか?
とーや:ありません。周りにも中学受験をした人はいなかったので、子どもの頃は「中学受験」というものがあることすら知りませんでした。恥ずかしながら、受験は高校から始まるものだと思っていたんです。
――今振り返って、中学受験をしてみたかったと思いますか?
とーや:いえ。当時に戻れたとしても、自分から中学受験を希望することはないと思います。私には小学生であれだけ努力できる自信がまったくありません……。どの学校を目指すか以前に、何年もかけて受験に向けて努力を続けること自体が、本当にすごいことだと思います。
取材・文=原智香
記事一覧に戻る