※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年8月号からの転載です。

あらゆる人がインターネット上で発信するのが当たり前になったいま、「個性」を出すのはなかなか難しい。そんな状況で強烈な個性を放ち、注目を集めているのが天竜川ナコンさんだ。自身の存在意義を問うようなラップを歌い、かと思えば、「想像上の妻」と結婚したり、「自分の顔のタトゥー」を入れたりと、理解の斜め上を突き進む日々をブログに綴る。ナコンさんにとって、それらは「自己表現のひとつなのでどうしてもやめられないんです。そうしないと生きていけなくて」とのこと。
YouTube「現実チャンネル」での動画投稿もまめに続けてきた結果、現在は5万人を超えるチャンネル登録者に支持されるようになった。
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「僕の動画って、基本的には中年男性が散歩しながら語っているだけなんです。そんなチャンネルに何故5万人も集まっているのか、もう奇跡みたいなことですよね。ただ、ありがたいことに『観ていると元気が出ます、安心します』なんて言ってもらえることもあって。僕、日曜日の夕方に放送されているような日常アニメが好きなんです。誰のことも置いてけぼりにしない世界観にホッとするから。だから、自分の動画もそんな雰囲気になっていたらいいなと思っていたので、少しでも伝わっていると嬉しいですね」
そんなナコンさんがこのたび、初の著書である『世界は解釈でできている』を上梓した。
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「本を書いてみないかと声をかけていただいたときは、自分自身が認められたような気がして誉れ高いな、と思いました。ずっとブログをやっていたので、書くことに対するプレッシャーも特に感じていなくて。ただ、なるべく誰かを傷つけることのないような仕上がりにしようという思いだけは強かった。過激なことは言わず、読む人を責めないようにしたいなと」
細部にまで気を配りながら書き上げたのは、ナコンさんが日常生活の中で経験した独得のエピソードの数々だ。サンリオピューロランドに一人で行き、野宿を堪能し、川で石を積む。どれもこれも突飛な行動すぎて、まずはそれが面白い。
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「僕、『オモコロ』が大好きで、その影響を受けているところがあると思います。あそこで公開されている記事はどれも面白くてずっと読んでいました。自分も誰かを笑わせるものを書いてみたいなと思って、実際に『オモコロ』に投稿したこともあるんです。結果、2020年度のオモコロ杯では入賞もできました。それだけじゃなく、子どもの頃から面白いテキストサイトに入り浸ってきたので、ネットカルチャーには多分に影響されているでしょうね。ワードセンスを褒めていただくことも多いんですが、僕の語彙はネットから醸成されています」
本書を読み進めていくと、やがて、面白さの向こう側にある「人生の捉え方」へと辿り着く。タイトルにもある通り、すべては自分の解釈次第だという。
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「昔の僕って、とても貧乏だったわけでもないし、酷い目に遭ってきたわけでもないんですが、何故か漠然と不幸感を抱えていたんです。でも、そういう人って結構いますよね。だから、この本を通して僕の思考回路に触れて、日常の捉え方を少しでも変えてもらえたらいいなと願っています。幸せも不幸も解釈次第なので」
取材・文:イガラシダイ 写真:島津美紗
てんりゅうがわ・なこん●ラッパー、YouTuber、ブロガーと複数の顔を持ち、運営する「現実チャンネル」の登録者数は5万人超。街の片隅や旅、思考の逡巡を素材に「意味の生成」を探求している。「この先、テクノロジーがどんなに発達しても、ロボットやAIには真似できない人間としての出し物を続けていきたいです」(天竜川さん)
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天竜川ナコンさんの本

『世界は解釈でできている』
(KADOKAWA/天竜川ナコン) 1870円(税込)
世界はなかなか変わってくれない。だったら、自分の「捉え方」を変えてみたら? そんな考え方をベースに、独得なエピソードを通じて、日常の中に落っこちているささやかな幸せを提示する。ビタミン剤みたいな一冊!
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